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猫は症状をあまり示さないため、病気が進行していてもオーナーさんが気がつかないことが多いです。私たちも自分の体のことでさえ気がつかないので、見逃してしまうのはある意味、仕方がないのかもしれません。健康診断を受けることで病気を早期に発見し、病気の悪化、発症を防ぐことができます。

今回は猫の健康診断について、当院の健康診断コースと照らし合わせながら、よくある質問を中心に検査の注意点を解説していきます。

1検査の種類、2健康診断の頻度、3その他のオプション

1検査の種類

「愛猫の健康は気になるけど、どんな検査を受けたら良いのかわからない」と相談されることがよくあります。これは当然なことで、私も自分の健康診断をどこまでやるべきなのかとても考えました。

猫の健康診断において、各獣医師によって考え方は異なります。私は各ライフステージあった検査を受けることが大切だと考えます。猫も年齢によってかかりやすい病気が異なります。

もちろん検査を広く行えば、カバーできる病気の範囲が広くなりますが、検査が増えればストレスが増え、費用もかさみます。その年代の猫にほとんどない病気の検査を受けさせても仕方がありません。下の表は当院の健康診断の内容です。

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まずは検査項目について何がわかるのか、どんな検査なのか解説します。

※「具体的にわかる病気」ではイメージ掴みやすいよう具体的な病名をあげていますが、単独の検査で診断が確定することはありません。複数の検査結果、問診、症状、猫のプロフィールと組み合わせて診断を行います

・身体検査:触診、視診、聴診、体重・体温の測定を行います。全ての検査の基本になります。急激な体重の減少がないか、歯肉の状態、触診で体表にしこりがないかなど5感を使ってチェックします。

具体的にわかる病気:体表のしこり、腹部の大きなしこり、痩削、肥満、脱水、皮膚の異常、心雑音、呼吸の異常、歯肉炎、口臭、発熱、低体温など

・血液全血球計算:血液の血球数(赤血球・白血球・血小板)を測定します。赤血球の数、大きさ、ヘモグロビンの量、白血球の数、種類、血小板の数がわかります。

具体的にわかる病気:貧血、白血病、白血球減少症、血小板減少症など

・生化学検査:肝臓酵素(ALT,AST,ALP,GGT)、腎機能のマーカー(Cre, BUN)、血糖値(GLU)、脂質代謝(T-chol)、タンパク質(TP,Alb,Glob,Alb/Glob)、ミネラル(P,Ca)総ビリルビン(T-bill)の15項目です。これらの項目は人間の健康診断でも測定されるので馴染みがあるかと思います。検査結果の解釈は人と基本的には同じですが、異なるこ項目もあります。各臓器に異常がないか調べることがきます。

具体的にわかる病気:肝臓の障害、腎機能の低下、糖尿病、高脂血症など

・尿検査:尿の性状(尿pH、尿糖、尿比重など)の検査と、顕微鏡で観察(細菌、結晶など)します。猫は泌尿器の病気になりやすいので、とても重要な検査です。

具体的にわかる病気:尿路結晶、尿路細菌感染、腎臓病、糖尿病、尿路の出血、蛋白尿など

・便検査:便の性状(臭気、固さ)の検査と、顕微鏡で観察します。

具体的にわかる病気・症状:消化の程度、下痢、便秘、猫回虫やトリコモナスなどの寄生虫の感染、腸内細菌叢のバランスなど

・感染症検査:キトンコースでは猫の症状に合わせて、感染症検査を4つの中から1つ選ぶことができます。

①よくお腹がゆるくなる→便の病原体遺伝子検査(下痢パネル) ※便を5g以上ご持参ください。時間が経っていても大丈夫です。

②鼻水やくしゃみや涙目が続く→咽頭または結膜の分泌物の病原体遺伝子検査 (猫上部呼吸器/猫結膜炎パネル)

③元ノラ・外出する→猫白血病ウィルス抗原・猫エイズウィルス抗体検査

④猫伝染性腹膜炎やトキソプラズマ症が気になる→猫コロナウィルス抗体価、トキソプラズマ抗体価測定検査

・レントゲン検査(胸部・腹部):レントゲン線を照射をすることで体の内部を写し出すことができます。肺、心臓、腎臓、肝臓、消化管、骨などのサイズ、形を評価します。

具体的にわかる病気:横隔膜ヘルニア、肺水腫、胸水、腹水、肺がん、腎臓の腫大・縮小、尿路結石、骨の異常など

・レントゲン検査(肘・膝):猫も高齢になると関節炎が増えることがわかっています。特に10歳以上の高齢猫では関節の痛みが生活の質を下げ、元気や食欲を下げていることも近年指摘されるようになりました。特に関節炎がでやすい、肘と膝を撮影します。関節炎は室内環境を改善することで痛みを和らげることができます。

・超音波検査(心臓・腹部):レントゲン検査よりも各臓器を細かく見ることができます。腎臓の形、サイズ、結石、腸管の構造・肥厚などを検査する場合はレントゲンよりも効果的です。また心臓ではリアルタイムに心臓の動きを観察できるので、各種心筋症の診断に効果的です。

具体的にわかる病気:肥大型心筋症(平均発症年齢7.2歳)、尿路結石、多発性腎嚢胞など

・SDMA(腎機能マーカー):日本では2016年から測定できるようになった新しい腎機能マーカーです。これまでの血液検査よりも早い段階で腎機能の低下を検出できます。具体的には、これ前でゃ腎機能が75%以上失われないと検出できませんでしたが、SDMAは40%の腎機能低下を発見することができますので、早期発見に効果的です。

・フルクトサミン:過去2〜3週間の平均血糖値を反映しています。血糖値はストレスによって一過性に上昇する性質があり、猫では特に顕著です。そのため病院での血糖値と、自宅での血糖値にギャップがある可能性があります。フルクトサミンは食事やストレスによる影響が少なく、より正確に日常の血糖値を把握することがでいます。

・T4(甲状腺ホルモン):10歳以上の猫に多い甲状腺機能亢進症の検査です。甲状腺機能亢進症の症状は一見、病気とは思えない症状(活動性の上昇、食欲の上昇)が特長です。進行すると疲労感、削痩、動悸などの症状が現れます。心筋肥大、高血圧を起こし、腎臓にもダメージを与える可能性がある病気です。

1.2その他のオプション

1.2.1遺伝子検査

特定の遺伝子変異を持っていると将来発症しやす病気がわかっています。こういった遺伝子をチェックすることで、発症のリスクがわかります。特にブリーディングを考えている場合に重要です。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究所で検査を行います。

・肥大型心筋症(HCM):検査可能猫種→メインクーン、ラグドール

心筋が肥大し、十分な心機能を維持できなくなる病気です。例えば、メインクーンでA31Pという遺伝子変異を1つ持っていると、肥大型心筋症のリスクは約1.8倍、2つ持っていると18倍と報告されています。

・多発性腎嚢胞(PKD):検査可能猫種→全ての猫(特にペルシャ系)

腎臓に嚢胞(膜に包まれた袋)がたくさんできてしまう病気です。嚢胞が腎臓を圧迫し腎機能を低下させます。特にペルシャ系の猫種(ペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤン)に多い病気ですが、その他の猫でもしばしばみられます。

・骨軟骨異形成症:検査可能猫種→スコティッシュフォールド

スコティッシュフォールドの特徴的な垂れ耳はF遺伝子により起こっています。このF遺伝子は優性遺伝であり、1つ持っていれば垂れ耳になります。2つ揃ってしまうと骨軟骨異形成という骨が痛む病気になる可能性が高くなります。F遺伝子を何個持っているのか調べることができます。

1.2.2アレルギー検査

ハウスダストのような室内環境因子、雑草を含む室外環境因子、牛肉などの食物に対してアレルギーの有無を検査することができます。ただし、この検査は偽陽性(実際にはアレルギーがなくても検査で反応してしまう)が出やすいので結果の解釈には注意が必要です。興味のある方はご相談ください。

2健康診断の頻度

年に1度、10歳以上では半年に1度を推奨しています。(AAFP米国猫医学会)ワクチンの接種時など定期的に健康診断を行うことをおすすめします。

ただ10歳以上の場合、毎回項目が多いと大変なので、項目を絞った検査と広い検査を半年ごとに交互に行うのが良いかと思います。

3その他のFAQ

・絶食について

12時間の絶食を推奨しています。お水はそのままで大丈夫です。血液検査への影響だけでなく、超音波検査などの画像検査でも胃の中に食事があると検査の妨げになてしまうことがあります。

例):翌日10時に検査をするのであれば前日の20時まで晩御飯を終える。

・尿を持参する場合

検査精度を考えると院内で採取し、すぐに検査するのが望ましいですが、生理現象なので必ず尿が溜まっているとは限りません。

尿は採尿後時間が経過すると性状が変化して検査結果に影響を与えます。原則的に採尿後3時間以内の検査が望ましいです。すぐに検査できない場合は冷暗所(4℃)で保存し、6時間以内であれば実施可能です。

(採尿方法については近日コラムでまとめます。)

最後に

今後は早期発見、予防医療が獣医療でもさらに重要になってくると予想されます。新しい腎機能マーカーのSDMAや遺伝子検査など検査が実施できるようになった一方で、解釈に気をつけなくてはいけない検査も多いです。検査を受けただけでなく、正しく検査結果を理解することが重要です。

検査項目を選ぶコツは健康診断の目的を明確にすることだと思います。どの検査で何がわかるのか、どの年代でなんの病気が多いのかを知ることが、効果的な健康診断をするコツでしょう。

当院は各コースごとに推奨年齢を表示していますが、他のライフステージの検査を受けることも可能です。時間や予算と相談し猫のプロフィール(年齢、品種、過去の病歴)にあった検査をお選び下さい。

 

“猫の健康診断” への10件のコメント

  1. こんばんは。おそらく10年くらい外猫として生きてきて、アパートに住みついている半野良半飼猫のようなメスの子を、年齢も考えて室内で飼うようにしてあげたいなと考えています。自由に動ける事がなくなりますし、10年間外だったので、トイレから何から相当大変かなあと、何より猫にとって、どっちがベストなんだろうとなかなか結論が出せずにいます。その子はおそらく避妊はしていて、穏やか目な性格です。外に、雨風しのげる猫ハウスも買って入ってくれていたのですが、他の野良ちゃんがご飯を食べるのに鉢合わせたりして、警戒して、雨が降っても小屋に入らなくなりました。
    台風や、これからの冬を思うと、室内にいれてあげたいなと思ってしまうのですが、そのままどんな気候であれ、年齢であれ、そのままの環境に置いてあげる方が猫ちゃんにはいいのでしょうか、、?
    先生にご意見うかがいたくメールしました。
    よろしくお願いします

    1. ken様

      私は獣医ではありませんが、kenさんと同じことで
      悩んでおりましたので、ご参考になればと思いコメント残します。

      私も外で生きている野良猫・人慣れしていない猫
      (メス・年齢不詳・避妊済→どなたかが手術をして
      くれていました)にずっとエサを与えておりました。

      ある日思い悩んだ末
      完全室内飼いを決行いたしました!
      さぞかし慣れるまで大変だろうと覚悟していましたが
      野良猫の時は警戒してシャーシャー言う猫でしたが
      部屋に入れるなり、その猫は
      警戒するどころか甘えるしぐさをしました。
      (お尻をあげて触ってって感じです)
      まだ保護して数カ月しかたっていませんが、子猫の時から
      完全室内飼いしていた猫となんら変わりない猫になりましたよ。
      (トイレはちゃんときめられた場所でするし、いたずらはしません!)
      今では毎日、甘えてくるたびにその猫が
      「ずっと外の過酷な環境で生活するのは大変だった・・。私を家族に
      してくれてありがと」って感謝する感じでなついてきます。
      家族にしてよかったと心から思っています。

      kenさん悩んでいるより保護してみてください。
      住み慣れた外がいいと思って警戒するのはきっと
      ほんの何日だけですよ。ちゃんと愛情を感じれれば
      安全で快適で、人のぬくもりを感じる
      完全室内飼いの方が自分の身体にとって楽だということは
      猫に伝わり、理解し慣れます。
      (猫の適応能力は人間が思うよりはるかにすごいです。
      猫をなめてはいけません。)これが私の見解です。

      1. モカさん
        ありがとうございました。そうですね。
        今その子は、ご飯をあげるからか、私にはとても懐いて、私の姿が見えるとよってきてはくれます。ただ、部屋に入れてドアを閉めてしまうと、怯えてなきやまないので結局外に離してあげての繰り返しです。しばらくはそれに耐える他ないですよね。。
        とても参考になりました。ありがとうございました!

  2. 有難う御座います。先日の検査結果での返答の様で嬉しく読ませて貰いました。
    かかりつけのDrは此処まで細かく聞けません。
    HPならではですね!内覧後の予約で相談したいと思いますので宜しくお願い致します m(_ _)m

  3. こんばんは、もうすぐ開院ですね。

    健康診断の大切さを知ることができました。
    猫の遺伝子検査でルーツがわかることにも興味を感じましたが、具体的にはどんな検査方法になるのでしょうか?

    1才のサビ猫(雑種・元野良)なので、検査するとしたらPKDになるのかな?と思いましたが、まだ必要な時期ではないと考えられますか?

    猫に負担のかかる検査ならなるべくしたくないので、検査が必要になった時に一緒に調べてもらえたらいいなと、ちょっと思いました。

    1. まやさん こんにちは。
      費用については近日HPを更新いたしますので、もうしばらくお待ちください。

  4. ありがとうございます、そうですよね。
    お忙しい中、即行の返答感謝いたします、私も個々に日々考えて行こうと思います。

  5. こんにちは、お教えいただければ幸いです
    SDMAについてなのですが、SADAは上昇しているが、 BUN CRE は正常値の場合で腎臓用処方食の必要性は・・・? 私は、「まだ」と思うのですが、如何なものでしょうか?
    尿比重の低下が有れば、始めても?=時間の問題でBUN CRE も上がりそう?と思うのですが、
    先生のご意見をお聞かせ願えれば幸いです、よろしくお願いいたします。

    1. 黄色いカエルさん
      こんにちは。ご存知の通りCKDステージ1の猫に対して腎臓病療法食が効果的であるというエビデンスは現在のところありません。腎臓療法食はタンパク質が低く炭水化物が高いため、筋肉量を落としてしまう可能性もありますので必ずしも療法食を与えることが良い方向に働くとは限りません。そのため私は猫のプロフィール(年齢やBCS)、超音波検査、尿検査(UPCなど)などと合わせて判断しようと思っています。

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