人間のように音楽を聴くことで動物もリラックスしたり、癒されたりするのでしょうか。犬ではクラッシック音楽を聞かせることで、無駄吠えがへり、心拍数や呼吸数が落ち着いたという研究があります。

猫では以前に 「Music for Cats」という音源が猫の注意を引いた、好意的な行動が増えたという報告があります。しかし猫のゴロゴロ音や泣き声をイメージした音が入っており、猫の注意を引くのはある意味当然といえるものでした。

今回はよりストレスがかかる環境として、動物病院で身体検査を受けた時にストレススコアに変化があるか調べました。無音、そしてクラシック音楽で同様のことを行い比較しています。

 

 

題:動物病院における、猫の行動と生理的ストレス反応に対する音楽の影響

目的:猫用音楽(feline-specific music) を動物病院でかけ身体検査中の、キャットストレススコア(CSSs)、ハンドリングスケールスコア(HSs)、好中球/リンパ球比(NLRs)が低下するか否かを明らかにする。

方法:猫は無音、クラシック音楽、猫用音楽の3パターンの環境で2週間あけて身体検査を実施した。CSSsを音楽をかける前、後、身体検査中にそれぞれ記録した。HSsを身体検査中に記録した。生理的なストレス評価はNLRsを用い た。

結果:音楽をかける前のCSSは無音、クラシック音楽、猫用音楽の3つで差はなかった。音楽をかけた後のCSSは無音とクラシック音楽の間では有意な差はありませんでしたが、猫用音楽と無音、また猫用音楽とクラシック音楽の間で比較すると、猫用音楽時のCSSsが有意に低下していた。

HSsは無音とクラシック音楽の間では有意な差はなかったが、猫用音楽と無音、また猫用音楽とクラシック音楽の間で比較すると、猫用音楽のHSsが有意に低下していた。NLRsは3つ音楽間で差はなかった。

結論:猫用音楽を身体検査前、身体検査中にかけるとCSSs、HSsともに低下した。しかし、NLRs測定による生理的ストレス反応は変化がなかった。猫用音楽はストレスを低下させ、動物病院おける治療の質を改善させる効果がある可能性がある。

補足

・キャットストレススコア:猫の体の部位を細かく評価し、猫のストレスを数値化したものです。1997年に作られたもので、古典的な評価方法ですが、この手の論文でしばしば引用されています。

Cat Stress Score from Kassler & Turner 1997を元に作成

・ハンドリングスケールスコア:ハンドリングというのは、身体検査や採血などを行う上で猫に触れたり、押さえたりすることです。ハンドリングを実施するハンドラーに対しての反応を評価基準としています。

Zeiler GE, Fosgate GT, van Vollenhoven E, et al 2013, SAGE Publications をハンドリングスコアに改変したものを元に作成

・好中球/リンパ球比(NLRs):好中球とリンパ球は両方とも白血球の仲間です。通常ストレスがかかると、好中球は上昇、リンパ球は減少する傾向にあります。そのためストレスがかかるとNLRsは上昇し、リラックスするとNLRsは低下すると考えることができます。

 

コメント

以前の猫用音楽の研究に比べると、より実践的な環境での検証でした。今回の研究で使った音楽は「Scooter Bere’s Aria」という曲です(最後にリンクを貼っておきます)。この音楽は猫の授乳期の環境音をイメージしており、喉鳴らしのゴロゴロ音や、猫が聴きやすい高い周波数で作られています。実際に聴いてみるとわかりますが、序盤からゴロゴロ音がかなり強く聞こえます。うちの猫たちも音楽がかかるとすぐに反応がみられましたので、皆さんも是非一度試してみてください。

 

 

 

 

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