猫の老化についてまとめたレビューを見つけましたので、抜粋してご紹介します。人間ほどではありませんが、猫も高齢化が進んでおり、米国のデータでは約20%の猫が11歳以上であると報告されています。このレビューは猫において、老化による正常な身体機能の変化をまとめていますが、猫は科学的根拠が不足しがちです。そんな時は他の動物種のデータを引用したり、専門家の意見で補足して書いています。

猫の老化とは?

動物は生まれてから亡くなるまで、常に変化が起きています。動物種を問わず生き物の一生はある時点までは「成長」、それから先は「老化」の2つに別れます。老化とは「成長期以降に起こる生理機能の衰退」といえるでしょう。生理機能が衰退することで、遺伝的な要因や、外界からのストレス対する適応力が低下し、病気になりやすくなったり、最終的には死に至ります。

老化は猫にとって悪いことだけではありません。例えば歳をとった猫は分別がよく、確立された習慣を持っているため、問題行動が少ないです。また良くも悪くもないことしては白髪が増えたり、運動量が落ち着いてきます。猫では11歳〜14歳までを中年期、15歳以上を高齢期と考えます。

認知機能と行動の変化

ここ20年で、高齢犬の認知機能が低下していることを裏付けるデータが徐々に出てきて、猫でも同様の変化が起きることが推測されます。MRIなどの画像検査の研究でも、高齢猫の大脳が萎縮していたり、脳室や脳溝(脳実質ではない部分)が増大しており、犬の認知症と一致します。

16〜21歳の高齢猫と4歳以下の若い猫の脳を比較したところ、アミロイドの蓄積や、タウタンパク質(人でアルツハイマー病などの原因と考えられている物質の1つ)の異常は高齢猫で認められ、若い猫にはありませんでした。

さらに一時的な空間認識の混乱(一時的に自分がどこにいるかわからなくなる)、不適切な無駄鳴き、徘徊行動などを含む認知症の症状がある猫と、ベータアミロイドの蓄積量が関連していたという報告もあります。猫に簡単な迷路を与えた研究でも、年齢が上がるにつれて成績が悪くなり、個体差はあるものの10歳前後から認知機能は低下し始めると考えられます。

皮膚と毛並みの変化

歳をとると毛根が細くなり、角質が過剰になり、結果として部分的な脱毛ができることがあります。毛のメラノサイトが減ることで白髪が増えたり、毛の色が薄くなります(茶色は薄い茶色に、黒猫は赤っぽくなります)。一方でひげは白かったもの黒くなったりするので不思議なものです。また皮脂が少なくなり、グルーミング行動も減るため、毛並みは乾燥またはベタつき、光沢がなくなります。皮膚の柔軟性がへり、爪が脆くなるのも高齢猫でみられる特徴です。

太陽光による紫外線のダメージと猫の年齢も相関がありました。白猫は扁平上皮癌になりやすいというデータはありますが、室内で飼育しているのであれば、日光浴を制限する必要はありません。

体重と肥満度の変化

適正な体重を維持することが、病気の確率や死亡率を下げることはどの動物でも共通のことです。しかし猫でも肥満が問題になっており、飼育猫の約33%は肥満であるというデータもあります。肥満とはは適正体重よりも20%以上増えている状態、と定義されています。

成猫期以降は体重や体脂肪率は一定か増加する傾向がありますが、11歳以上になりると減少傾向に転じます。軽度の体重減少は老化において正常な変化ですが、急激な体重減少には様々な健康上の要因が絡んでいるます。どの程度の体重減少が許容範囲か、一概にはいえませんが5%以上の体重減少は病気を疑い、10%以上減っている場合は病気の可能性が高いと判断されます。

筋肉・骨格の変化

赤丸:肘関節がモヤモヤしている、関節炎を起こしている高齢猫のレントゲン

いちばんの変化は筋肉量の減少による除脂肪体重の減少、関節炎による機能低下です。これらの変化は10歳以降の猫で認められます。これにより、高いところに登れない、高いところから降りる時に躊躇する、トイレを我慢するなどの症状が現れます。一方で超高齢猫を除き、足を引きずる、歩き方がおかしい、触ると痛がる、などの症状は加齢だけで起こることは少なく、病気や怪我の可能性が高いです。猫は単独飼育動物なので多少の痛みは隠すためです。また家では痛がっていても動物病院で歩かせると、痛みを隠して普通に歩くのも猫ではよくあることです。

感覚の変化

20歳のオス猫。目の縁に色素沈着が現れている。アイラインが引かれているようで、いっそう目が大きく見える。このような変化は加齢によるもので病気であることは少ない 

嗅覚、聴覚、視覚などの機能は人間同様低下します。最もわかりやすいの眼のレンズ(水晶体)が濁る変化です。犬や人のような白内障は猫では少なく、ほとんどが核膜硬化症(Lenticular sclerosis)と呼ばれます。核硬化症は視力を阻害することは少ないため、基本的に治療を必要としません。

また眼についてもう一つ、虹彩(眼の黄色や緑色の部分)や眼瞼にシミが増える色素沈着も多くの高齢猫で認められます。これも同様に視覚に影響はありません。色素を由来とする癌である、メラノーマとの見極めは初期の段階では困難ですが、多くの場合は病的なものではありません(黒い部分が盛り上がっていたり、目の異常がある場合は受診してください)。

聴覚では高齢になると特に高音が聞きづらくなると考えられています。聴覚の低下は不安や混乱を起こし、高齢猫で無駄なきが増える原因の1つになっているでしょう。

また嗅覚の低下は食欲と関係してきます。猫にとっては臭いは獲物を見つけるだけでなく食欲に大きく関わっています。残念ながら人や犬のように加齢による嗅覚の低下を実証した研究は猫ではありません。

歯・口腔内の変化

赤丸:猫で最も歯石が付きやすい上顎の第4前臼歯。歯が溶けており、ここまでくると抜歯が必要になる可能性が高い

歯を覆っているエナメル層は一生でほとんど厚さは変わりません。一方で歯の神経が入っている歯髄腔は年齢が若い方が広く、象牙質は薄いです。年齢につれて象牙質が厚くなり、歯がくすんで黄色くみえます。唾液中のカルシウムとリンががプラーク(歯垢)と結びついて歯石を形成します。歯石は唾液腺が開口している、上顎の奥歯(第3.4前臼歯)が一番歯石ができやすいです。

歯石や歯垢が病原性のある細菌の増殖を許し、その細菌の副産物によって免疫が刺激されます。その結果、歯を支える歯肉などの組織に炎症を起こし、また破壊します。口腔内の病気はペルシャやヒマラヤンでよりリスクが高いです。これは不正咬合(噛み合わせが悪い)の発症率が高いためだと考えられます。

口腔内の変化は割と早くから現れ、ある研究では3歳以上の68%が何らかの口腔内疾患を持っていました。また高齢になると犬歯が伸びて来たようにみえることがあります。これを挺出と呼びます。

挺出が認めらる猫、黒猫なのでよりいっそう犬歯が目立つ。歯肉炎を起こしていなければ治療する必要はない

消化器の変化

人間の食道においては一見健康な人でも高齢になると、括約筋の力や、神経の減少から食べ物を送る力低下します。猫でも同様なことが予想されるので、高齢猫で吐くことが増えるのはこれが原因になっている可能性もあります。

また大腸の動きにおいても、年齢によって通過時間が低下することがわかっています。腸内細菌においても、高齢猫はビフィズス菌が減少しています。これにより、消化吸収に影響しています。喉の渇きに対する感覚も鈍り脱水に陥りやすくなります。これらの結果、高齢猫は便秘のリスクが高まります。

心肺機能の変化

動物用血圧計:原理は人用と同じでバンドを加圧して測定

一見健康にみえても恒例の猫は検診で血圧を測った方が良いでしょう。ある研究では10歳以上の猫は若い猫よりも血圧が高く出ています。猫は動脈硬化(アテローム性)を起こすことは少ないですが、血圧が高いと網膜や腎臓に負担をかけます。心臓に関しては猫は弁膜症よりも心筋症が多く、聴診で異常がないことが多いものの、重度になると雑音や不整脈が出てきます。

呼吸器では高齢猫と若い猫のレントゲンを比較すると、気管支が太く、全体的に白くなっていました(気管支パターン)。これらは正常な変化であり、呼吸困難などは伴わないません。

腎・泌尿器の変化

15歳以上の猫は80%以上が慢性腎臓病であったという報告もあるように、猫にとって最も多い病気が腎臓病です。猫の慢性腎臓病は腫瘍や感染症ではなく、尿細管間質の繊維化が原因なっていることがほとんどです。

また膀胱においてはグリコサミノグリカンとコンドロイチン硫酸が減少しています。これらは組織を柔軟にしたり水分を保持する作用があるため、尿もれや尿の回数が増えます。これは下部尿路疾患の猫においても減少している成分です。

尿路結石は7歳以下ではストルバイトと呼ばれる結石が多いのに対して、10〜15歳ではシュウ酸カルシウムの方が多くなります。高齢猫と若齢猫の尿を比較したところ、高齢猫の方がpHが低く(酸性)、またシュウ酸カルシウムのRSS(相対的飽和度)が高いことがわかりました。ストルバイトはpHが高い(アルカリ性)とできやすいので、高齢で減るのはその影響かと考えられます。

結石は高齢では膀胱ではなく腎臓や尿管(上部尿路)にできやす傾向があり、これもシュウ酸カルシウムが多いです。なぜ高齢になると上部尿路に結石ができやすいかは不明ですが、腎臓病と関係はあるのか、今後さらなる研究が待たれます。

内分泌の変化

甲状腺機能亢進症の猫は基礎代謝があがり、痩せる。また被毛も粗剛になる

内分泌とは簡単にいうと体内の活動を調整するホルモンのことです。糖尿病や甲状腺機能亢進症(人でいうバセドウ病に近い病気)などが内分泌疾患と呼ばれます。猫の甲状腺ホルモンは5歳までは一定ですが、それ以上で血中濃度が徐々に上がりはじめます。

肥満の猫では若齢猫よりも高齢の猫の方がインスリンに対する反応が悪くなる(インスリン抵抗性)ことがわかっています。これは中年齢以降で糖尿病になる理由と関係しているでしょう。

免疫システムの変化

猫の研究でも10〜14歳ぐらいから免疫において重要な役割を果たす白血球の数自体が減少しはじめます。抗体を作る力も10歳前後から遅くなることがわかっています。一方で炎症性蛋白(インターロイキン6など)が高齢では増え、慢性的な低レベルの炎症が持続することによって病気になりやすくなったり悪化する原因となります。人医療で使われる炎症と加齢を合わせた言葉インフラメージング(Inflammaging)が、猫でも起こっていると考えることができます。

まとめ

同じ哺乳類である人間や犬で起こる各部位での老化は猫でも同様に起こっていると考えて良いでしょう。動物種によって老化の影響がでやすい部位が異なります。猫で特に老化が現れやすい場所は、泌尿器(腎臓)、歯が顕著で出るといえるでしょう。反対に人間と比べると心臓や眼、皮膚・被毛は影響は少ないでしょう。猫は老化が外見にでづらいのは羨ましい限りですが、見た目は若くても免疫力などは下がっていますので体調の小さいな変化に気がついてあげれるといいですね。

 

参考資料

Bellows, Jan, et al. “Aging in cats: common physical and functional changes.” Journal of Feline medicine and surgery 18.7 (2016): 533-550.

“猫の老化 身体機能の変化” への1件のコメント

  1. 先週の日曜日の朝、うちのイケメンくんが亡くなりました。15歳と11ヶ月でした。母親が咥えてきたうちの裏に置いていった子で、まだへその緒が付いており、ミルクから育てたはじめての子でした。病気らしい病気を全くせずに来た子でしたが、今年に入り頻尿になり、6月末に血尿が出始め、膀胱炎の抗生剤を処方されました。その後急に首が上がらなくなり、今度はステロイド剤を処方され、始めて3日後の死でした。ステロイド剤のおかげで首は上がるようになりましたが、食事をしなくなり、強制給餌も拒否されました。1歳の時に去勢しておりもともと細い子でしたが、最期は1kgくらいしかありませんでした。治療最中の死でしたが、わたしの腕の中で静かに逝きました。検査結果も出ていなかったので、直接の死因はわかりません。丸2日食べなかったのでそれが直接の死因なのかも知れません。ただ、明らかな症状が出始めてからほんの数ヶ月、小さな身体の脆さ儚さを痛感しています。

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