今回は猫の呼吸数に関する論文です。猫の呼吸数は安静時で1分間あたり24〜42回とされています。何かしらの異常で呼吸数が上がる理由としては、貧血、呼吸器の病気そして循環器の病気があります。猫の循環器の病気は、心筋症が多いです。しかし猫の心筋症はかなり進行しないと症状が出ないという特徴があります。そのため血液検査や超音波検査での検診が推奨されていますが、全ての猫が受けられるわけではありません。そこで自宅で簡単にできる呼吸数測定だけで隠れた心臓病を発見できないか、という点に着目したのが今回の論文です。

 

 

:健康猫と無症状な心臓病の猫における睡眠時と安静時の呼吸数

目的:睡眠時と安静時の呼吸数は心臓病の猫において一般的に測定される項目です。しかし健康な猫や無症状な心臓病猫において呼吸数に関する研究はこれまであまりされていませんでした。

方法:心臓超音波検査で正常な猫(EN)59頭、見かけ上健康な猫(AH)28頭、無症状な心臓病猫(SHD)54頭の睡眠時の呼吸数(SRR)と安静時の呼吸数(RRR)を調べました。

結果:EN、AH猫そして、軽度〜中程度のSHD猫(LA/AOをを元に左房拡大の程度から定義)のSRRは一貫して30回/分未満であり、SRRの中央値は21回/分でした。

重度SHD猫はSRRが30回/分を超えることがあり、また軽度から中程度のSHD猫のSRRと比べても高いという結果が出ました(P<0.05)。また一貫してRRRはSRRよりも多かったです(P<0.05)。それ以外ではSRRの平均値は年齢と、検証した地域によって影響があり、体重は関連性はありませんでした。

結論:今回の検証は自宅環境でのSRRとRRRを評価する上で有用な指標になり、また症状がある心臓病の猫を自宅で管理するのに役立つでしょう。SRRが平均で、もしくは複数回30回/分を超える場合は、検査が必要である可能性が高いといえます。

補足

・猫は犬のように心臓病で咳をすることは殆どなく、呼吸困難になってから発見されることが多い、そのため早期発見が大事

・睡眠時の呼吸数(SRR)の中央値は21〜22回/分だった

・重度のSHDのSRRは、軽度から中程度のSHDよりも高いが、それでも30回/分以上になることはそれほど多くない

・気温が高い時、もしくは若い猫は健康でもSRRが高くなる可能性がある

 

まとめ

正直な感想として、心臓が悪くても思ったよりも睡眠時の呼吸数が増えないな、という印象を受けました。1分あたり30回を超えたらまずいと判断できるものの、それ以下でも安心はできないという結果でした。やはり猫の心臓病は早期に発見するのは難しいです。ただ睡眠時の呼吸数が大体1分あたり21〜22回と知っておくのは良いことでしょう。

ただ、完全に眠りについていないウトウト状態の猫で浅い呼吸をすることはあるので、持続的に回数が多いかみる必要はあると思います。心臓が苦しければずっと呼吸数が多いはずなので。

実際に「呼吸数を測ってください」と獣医師からいわれるのは、心臓病と診断された後の方が多いと思います。治療が効いているか確認するため、自宅の呼吸数をみてもらいます。

「うちの猫は調子が良い時は大体〜〜回ぐらいだな」と覚えておくと、1分あたり30回以下でも心臓が苦しい時に早く気がつけるかもしれません。その時に安静時よりも睡眠時の方がバラツキが少ないので、参考にしやすいでしょう。

猫は苦しくても言葉で伝えることができません。あまり苦しくなると猫も眠れなくなってしまいます。そうなる前に治療を受けられるよう、睡眠時の呼吸数は1つの指標になるでしょう。

Ljungvall, Ingrid, et al. “Sleeping and resting respiratory rates in healthy adult cats and cats with subclinical heart disease.” Journal of feline medicine and surgery 16.4 (2014): 281-290.

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