フェリウェイとは猫の頬から分泌されるフェイシャルフェロモンF3に注目して開発された、フェロモン製剤です。問題行動をおこす猫に対して安全に使用できる商品です。問題行動と一言でいっても尿スプレーから、飼い主への攻撃的な行動など様々な問題があります。フェリウェイはどのような効果が期待できるのか、その基本的な狙いと効果を解説します。
フェロモンとは?
日常会話では「あの人はフェロモンが出ている」などの表現に使われますが、生物学的な用語でのフェロモンは少し異なります。
フェロモン:虫や動物の体から自然に分泌される化学物質であり、同種間の動物でのみ反応し、コミュニケーションに用いられる。
フェロモンは性的な興奮を起こす「性フェロモン」だけでなく、外敵の存在を仲間に知らせる「警報ホルモン」、ストレスを緩和させる「安寧(あんねい)ホルモン」等があります。
フェロモンは同じ種の動物にしか反応しませんので、フェリウェイを散布しても、人間はかすかな香りを感じるだけです。
猫のフェロモン
猫のフェロモンは口の周り、乳腺、肛門腺、尾の付け根、泌尿生殖器周辺から分泌されています。特に口周りから出るフェロモンをフェイシャルフェロモンと呼びます。フェイシャルフェロモンの種類はF1〜F5まで分類されています。頬を柱や人間の足に擦りつけるのもマーキングの一種です。
フェイシャルフェロモンは猫に安心感を与え、情動を落ち着かせる効果があると考えれています。特にF3は頬のこすりつけなどから環境中に分泌されるフェロモンです。
フェロモンを感知するのは鼻の奥にある「鋤鼻器(じょびき)」と呼ばれる器官です(別名:ヤコブソン器官)。強烈な匂いを嗅いだ時に行うフレーメン反応が有名です。この時口を半開きにするのはこの鋤鼻器への通り道を広げているためです。
フェリウェイの狙い
猫の問題行動の多くはテリトリーの主張、または侵害されたストレスに対抗するために行われます。具体的には尿スプレー、過剰な爪とぎです。フェリウェイを散布することで、フェロモンを満たしこれ以上マーキングする必要をなくし問題行動を抑えます。そのため多頭飼いや、外猫の存在によるストレス、新しい環境への適応などに効果が期待できます。
フェリウェイの効果
行動学に関する質問を数多くいただきますが、一番の問題は治療に時間がかかり効果が実感しにくいということです。フェリウェイを使用してその日に効果が現れるのでばなく、猫が変化に気付きストレスレベルが下がることで効果が現れるので時間がかかります。これはフェリウェイに限らず他の治療でも同様です。実際にフェリウェイがどのような効果が報告されているのか、尿スプレーや爪とぎなどの行動に対しての研究を紹介します。
尿スプレーに対する効果
スプレータイプのフェリウェイを使用したところ75〜97%の猫で改善が見られ、完全に尿スプレーをしなくなった猫は33〜96%でした。
別の拡散器型のフェリウェイの効果を測定した研究では①グループには拡散器型フェリウェイを、②グループには無害の液体を拡散器に入れて、効果を比較しました。4週間後、①のグループの猫は尿スプレーの回数が70%減少しました。しかし②のグループの猫も尿スプレーの回数が約30%減少しています。
無害の液体と比較しているのはプラシーボ効果を防ぐためです。「薬をもらうとなんとなく効いた気がする」という精神的な安心感と実際の効果を混同しないためです。問題行動に対する治療効果は、プラシーボ効果を受けやすいと考えれらています。
※プラシーボ効果:本来は薬効として効く成分のない薬(偽薬)を投与したにもかかわらず、病気が快方に向かったり治癒すること。思い込みの力が状態を変化させることなどを意味する。
困った場所での爪とぎに対する効果
猫の爪とぎは実際に爪を鋭くするという目的以外にも、ストレス解消、視覚的または嗅覚(肉球からのフェロモン)によるマーキングのために行います。爪とぎは猫の正常な行動なので完全になくすことはできません。
いろいろな所で爪とぎをする猫53匹に、最適な場所に爪とぎ板を設置し、それ以外の場所で爪とぎをしたときはスプレータイプのフェリウェイを使用しました。その結果1日平均20回以上の爪とぎがみられた猫が、11日目には殆どなくなりました。
※この研究は「最適な場所に爪とぎ板を設置」と「フェリウェイ」の2つの治療をしているので、フェリウェイ単独でどのぐらい効果的なのかは疑問が残ります。
フェリウェイを使うときの注意点
これは問題行動を起こす猫全般にいえることですが、その行動が「猫にとっては正常だが、飼い主にとって不都合な行動」なのか、「環境に問題があるために起こしている行動」なのか、を見極めること大切です。環境に問題がある場合はフェウェイでは効果が上がりません。
例えば「尿スプレー」はマーキングのための行動で、猫にとっては正常な行動ですが、「不適切な場所での排尿」は環境やトイレに不満がありトイレ以外の場所で排泄しています。解決するにはまずトイレ環境を改善することが必要です。
「尿スプレー」と「不適切な場所での排尿」の見極め方はこちら
その他のフェリウェイの使い方
車での移動:車での移動の際にフェリウェイをキャリーケースにスプレーすると、移動中の嘔吐、排泄、鳴き声、興奮等が少なくなったという報告があります。
特発性膀胱炎:ストレスによって悪化する特発性膀胱炎という病気では、膀胱炎症状や改善までの日数が減少したという報告があります。
動物病院での使用:動物病院のケージのタオルにフェリウェイを使用すると、グルーミングや食事量が増えたという報告があります。
まとめ
猫のフェイシャルフェロモンF3の類縁化合物であるフェリウェイは様々な状況で使える可能性をもっています。安全性が高く、取り入れやすい反面、正しく使わないと効果が上がりません。担当の獣医師と相談しながら使用することをお勧めします。今後さらなる研究によって、どんな病気に使えるのか、どのぐらい効果があるかがより正確に明らかになることを願います。
参考資料
Experimental evaluation of the efficacy of a synthetic analogue of cats’ facial pheromones (Feliway) in inhibiting urine marking of sexual origin in adult tom-cats. Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics 20: 169.
Efficacy of Synthetic Feline Facial Pheromone (F3) Analogue (Feliway) for the Treatment of Chronic Non-Sexual Urine Spraying by the Domestic Cat.
Urine spraying in cats: presence of concurrent disease and effects of pheromone treatment. Applied Animal Behaviour Science 61: 263–272.
Evaluating a feline facial pheromone analogue to control urine spraying. Veterinary Medicine 95: 151–156.
Clinical Trial of a Feliway Pheromone Analogue for Feline Urine Marking. The Journal of Veterinary Medical Science 63: 157–161.
Evaluation of a novel method for delivering a synthetic analogue of feline facial pheromone to control urine spraying by cats. The Veterinary Record 149: 197–199.
コンセントに差しっぱなしで火事の心配はありませんか?
使用方法に「芯棒がセラミックヒーターに触れないように」とあるのですが、この意味がわかる方いますか?
セラミックヒーターがどの部分なのかも分かりませんし、もちろん触れているのか触れていないのかもさっぱり分かりません。。
はめる時に回し過ぎないように、ということなのでしょうか??
はじめまして・・・
猫のスプレーですごく困ってますのでとっても参考になりました。
フェリウエイはどんなところにかけても毒性等はありませんか?
我が家は多頭飼いでみんな去勢も早いうちにしているのですがどうしてもスプレー行動のひどい子がいていたるところにスプレーをされてしまいます。
たとえば台所の上にあがってまな板にされたり・・・下の方ならわかるのですがわざわざ高い所にまで上がってされたりするので非常にこまっています。
フェリウエイをどんなふうに使用するのが効果的なのかお教えただけたら幸いです。
よろしくお願いします。