猫の鼻の解剖
猫の鼻の解剖。青矢印:鼻平面、赤線:上唇溝、赤丸:外鼻孔

猫の鼻が乾燥しているけど大丈夫ですか?という質問を受けることがしばしばありますが、先に結論を言うと乾燥していても大丈夫です。

そもそも鼻が乾燥していると体調が悪いという話はどこからきているのでしょうか。おそらく犬の話からきていると考えられます。犬の鼻は猫よりもさらにしっとりしており、体調のバロメーターという考えられいました(実際には犬も鼻が乾燥しているからといって病気とは言えない)。

鼻がしっとりする理由

猫の鼻がしっとりしているのは、鼻腔内の分泌物が鼻腔の縁に流れてくるからです。さらに犬は鼻を舐めて湿らせます。これは鼻を濡らした方が嗅覚が鋭くなるから、と考えられています。猫も鼻を舐めることはありますが、犬ほど頻繁ではありません。

鼻は汗をかくと誤解されていることがありますが、猫の鼻の表面(鼻平面)には汗腺はありません※1。確かに病院で緊張した猫は検査台が濡れるほど肉球から汗をかくことがありますが、鼻がびしょびしょになった猫は見たことがありませんね。

鼻が乾燥しやすい時

特に鼻が乾燥しているときは、寝起きの時です。寝ている間は口の中が乾くのと同様に、鼻腔内の分泌量が減りますし、鼻を舐めることもないからです。また湿度が低い冬場は当然乾燥しやすいでしょう。

脱水の指標には適さない

獣医学において鼻の乾燥の有無が脱水の指標にされることはありません(実際には脱水すると鼻腔内の分泌物も減りますが)。成書には脱水を評価する身体検査には、皮膚の弾力性の低下、口腔粘膜の乾燥、眼球陥没、皮膚つまみ試験、細血管再充満時間(歯肉を圧迫し、色が元に戻るまでに時間)が挙げられます※2。なので脱水が心配な時は花ではなく、上記の項目をチェックしましょう。

※これらの身体検査所見は中〜重度の脱水でないと異常が出ませんので、脱水が疑われる場合は、獣医師の評価と血液検査を行いましょう。

乾燥+他の症状がある場合

ただし乾燥だけでなく鼻にかさぶたができていたり、鼻の周囲の毛が抜けている場合は皮膚病の可能性があります。特に鼻の先端に症状が出やすい皮膚病に、皮膚糸状菌、天疱瘡などが挙げられます。この場合は必ず動物病院を受診しましょう。

天疱瘡の猫の鼻

まとめ

鼻が乾いている+鼻の見た目に変化なし→乾燥していても大丈夫

鼻が乾いている+鼻に瘡蓋ができている、色が変化している、周囲の毛が抜けている→皮膚病の可能性

脱水が疑われる→鼻以外の身体検査、疑わしい場合は受診

 

 

参考資料

※1 :Hudson, Lola, and William Hamilton. Atlas of feline anatomy for veterinarians. CRC Press, 2017.

※2:徴候からみる鑑別診断 犬と猫の臨床  学窓社

 

 

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