ラプロスとは2017年に発売された猫の慢性腎臓病の薬です。当時はネコノミクスブームで、地上波のニュースでも取り上げられました。動物の薬がテレビで報道されるのは異例なことでした、私も強く記憶に残っています。ラプロスについてはブログでもこちらでまとめています。

一方で、獣医師の間では効果に懐疑的な意見もありました。その理由は効果判定の期間が短かった(6ヶ月)、母集団に偏り(ラプロスで治療したグループの方が元から腎臓の数値がやや低かったなど)があった、などです。そこから6年が経ち、追加検証した論文が出ましたのでご紹介します。

・ラプロスを飲んでいた猫の方が平均生存率が伸びた

このグラフは青線がラプロスを飲んでいた猫で、赤線が飲んでいない猫の生存率を示しています。スタートは全頭が生きているので100%です。途中で猫が死亡すると、生存率%が減り、右肩下がりになっていきます。真ん中の点線が50%ラインで、点線と赤及び青ラインの交わった時期が、半分の猫が死亡した時期を意味します。赤線の飲んでいないグループは9ヶ月頃に生存率が50%を切っており、それに対して、薬を飲んでいた青線グループは23ヶ月頃です。つまりラプロスを飲んでいた方が平均的に長生きしていることがわかります。

・ラプロスを飲んでいた方が、悪化しない期間も長かった

2つ目のグラフは無増悪生存期間を示しています。今回の論文では血清クレアチニン濃度が25%以上の上昇を増悪としています。やはりラプロスを飲んでいた青線グループの方が増悪するまでの期間が長いことがわかります。

補足

・ラプロスはステージ2、3の腎臓病に対しての効果を承認されているが、今回の対象猫は全てステージ3の腎臓病である(ステージについてはこちら

・腎臓病の悪い予後指標である血中リン濃度がラプロス群で有意に高かったため、結果に影響を与えた可能性がある。ただし再度血中リン濃度を調整した母集団で、再評価してもラプロスの有効性は認められた。

・治療中の心血管系疾患(うっ血性心不全など)の発症リスクもラプロスを飲んでいた猫の方が少なかった。これは腎臓病の進行を抑えたため、もしくはラプロスの血管内皮細胞の保護作用が心血管系にも良い影響を与えた可能性が考えられる。

まとめ

6年の時を経て、よりしっかりとラプロスの有効性が示されました。特にステージ3の猫では投与を後押しする根拠になりますね。一方で、ラプロスは国際的な腎臓病学会、IRISでは触れられていません。次回のIRISガイドラインのアップデートで言及があるか気になるところです。ラプロスの懸念点は1日2回投与する必要があることです。しかも長期的(今回の論文では最大44ヶ月=3.6年)な治療なので費用もかかります。それらのハードルがクリアできるのであれば投与した方が良い、という結果でした。

参考資料

・Ito, H., Matsuura, T., & Sano, T. (2023). Beraprost and Overall Survival in Cats With Chronic Kidney Disease.

 

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