猫は食事の好みのこだわりが強いところがあり、気に入ったものしか食べなかったりします。英語圏では「あの猫はフィニキー(Finiky)だ」なんて表現をし、フィニキーな猫が病気になると余計に食べなくて困ってしまいます。

そういう時は食欲増進剤をうまく使って回復を助けることがあります。しかしフィニキーな猫というのは薬の味にも敏感なことが多く、食欲増進剤を加えると余計に食べなくなってしまうこともあります。。

うまく薬だけ飲ませれば良いのですが、それも拒まれてしまうと食欲増進剤も使えません(投薬のコツはこちら)。そんな時にとても助かる皮膚から吸収される食欲増進剤が海外で発売されました。

Mirtaz公式HP  「もう一錠?犬に飲ませとけ 」というような感じでしょうか、凄んだ猫の写真が使われています

・有効成分はミルタザピン

商品名はミルタッツ(Mirtaz)で、有効成分ミルタザピンです。ミルタザピンは人の医療では抗うつ薬として認可されている薬です。猫に使うと食欲増進効果があることは以前から知られており、慢性腎臓病や糖尿病などで食欲が出ない時に使われています。

ミルタザピンは抗うつ薬の中でもノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)という種類に属します。脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の減少をうつ病の原因であると考える説があり、ミルタザピンはこれらの神経伝達物質の放出を促進させ、気分を和らげ、不安やイライラなどの症状を改善します。

・副作用は?

抗うつ薬と聞くと副作用が心配だと思います。猫で最もみられる副作用は活動性の増加(歩き回る、良く鳴く)です。行動の変化は飼い主さんを驚かせてしまうので必ず伝えています。基本的に時間が経って薬の効果が切れれば、これらの副作用も収まります。

それ以外には嘔吐、下痢、傾眠/倦怠感、血尿などが報告されています。それ以外には塗った場所に紅斑といって赤くなることがありますが、これな有効成分を入れていない軟膏(プラセボ)でも発生しており、ミルタザピンではなくて軟膏成分に反応している可能性があります。

 

・塗り方

①まず規定量を指先に塗布します。ミルタッツの場合1.5インチで、取扱説明書や箱に、実寸大1.5インチのバーが書いてあります。塗る人は皮膚につかないようディスポーザブル手袋をつけましょう。

②耳の内側、毛の生えてない場所(耳介内部)に塗りましょう。指に残らないよう広い範囲に塗って大丈夫です。これ以外にも首(毛を剃って)塗る方法もあるようですが、基本的に耳で良いでしょう。

主な注意点は以下の通りです

・必ずディスポーザブルの手袋をつけ、直接手で触れない

・吸収するまで2時間ほど、人や猫が塗った場所に触れないようにする

・口から飲ませる、目薬としてなど、間違って使わないように家族全員で注意

 

まとめ

実際に使ってみた感触でも、効果や副作用において内服と大きな差は感じず、安定して使える印象があります。皮膚に塗るタイプの薬は、動物医療、特に猫では投与が楽になるという大きなメリットがあります。ミルタザピン以外にも、甲状腺機能亢進症の薬(メルカゾール)などは海外では軟膏タイプも使用されており、今後さらに軟膏タイプの薬が増える可能性が高いでしょう。

参考資料

・Poole, Melinda, et al. “A double‐blind, placebo‐controlled, randomized study to evaluate the weight gain drug, mirtazapine transdermal ointment, in cats with unintended weight loss.” Journal of veterinary pharmacology and therapeutics 42.2 (2019): 179-188.

“薬が飲めない猫に朗報!耳に塗る食欲増進剤” への1件のコメント

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