DSC_0859
悪そうな顔にヒゲが似合っています

猫のヒゲをよく見てみると、思ったより長いなと感じないでしょうか。あどけない顔の子猫でもなかなか立派なヒゲをたくわえていますね。

人間のヒゲは口周囲を守るために毛が残っているといわれますが、猫のヒゲは少し違います。ヒゲの根元に運動を感知する神経があり、どんなに小さい動きや、空気の流れを感知することができます。また付着している筋肉(立毛筋)により動かすことも可能です。通常の被毛と区別して「触毛」「洞毛」などと呼ばれます。洞毛は口の周囲以外にもありますが、ここではまとめて洞毛をヒゲとして扱います。

洞毛の位置

IMG_5118
黄色:眼窩上 赤色:頬部。 水色:鼻部。もっとも発達している 紫色:下顎部。見落としがちだがしっかり生えている

 

足にもヒゲ?

DSCF6512

洞毛は前肢の手根部にも生えています。愛猫の前肢の手根球(少し離れた肉球)の近くをみてみましょう。3〜4本ヒゲが生えていませんか?この部分の洞毛は特に触覚に敏感で、前肢で獲物を掴む肉食動物の特徴です。獲物の捕獲(捕まえた獲物の微妙な動きを察知し、まだ動いているのであれば息の根を止める)障害物を避けるなど行動に関連しているのではないかと考えられています。

DSCF6514

洞毛の実力

洞毛は重さにしてわずか2mg、あるいは洞毛の向きに対して反対へ5Å(オングストローム)の動きに対して神経のインパルスが発生します。1Åは100億分の1メートルなので、センチメートルにすると5Å= 0.00000005cm ということになります。漫画のような単位ですが、猫の洞毛は信じられない微量な動きを感知していることがわかります。

これにより夜間でも視覚に頼らず近くの物体に反射された空気の流れを感知することができます。

動くヒゲ

洞毛は筋肉がついているので自由に動かすことができます。ヒゲの動きから猫の気分を探ることもできます。猫が歩いているときは広い範囲を感知するためにヒゲを外側に向けてワサッと突き出します。反対に猫が休んでいるときはヒゲをたたむように後ろに向けます。他にも猫同士が挨拶をしたり、匂いをクンクン嗅ぐときのヒゲはだらんと寝た状態になります。

猫のヒゲが抜けてしまいましたが大丈夫ですか?

上記の通りヒゲは猫にとって重要な感覚器ですが、風もなく、安定したテーブルや階段を移動する室内では問題になることは少ないです。「ヒゲを切ると平衡感覚がなくなりまっすぐ歩けなくなる」という話を聞きますが病院で見たヒゲがない猫達の歩き方は正常でした。視野が暗くなる夜間や不安定な木の上を移動する時などはヒゲによる情報が欠けると動きに影響がでるのでしょう。

ヒゲが抜けるまたは切ってしまった例として:トリミング時に誤って切ってしまった、アイロンに近づいてヒゲが焼けた、抗がん剤の副作用で抜けた(抗がん剤で被毛が抜けることは殆どありませんが、ヒゲは抜けることがしばしばあります)などがあります。

もちろんヒゲがなくなると外部からの情報が減り、不安を感じますし、痛いのでわざと抜くようなことは絶対にしないでください。

デブ猫はヒゲが長い?

洞毛は放射状に顔の周りを囲んでおり、狭いところに入るときはヒゲによるチェックで通過できるか判断します。そのため猫は頭さえ通ることができれば、体も通ることができるのです。しかし肥満度が高い猫は顔よりも体が大きくなっていることも。その場合は体のサイズに合わせてヒゲが伸びるのでしょうか。

残念ながら猫の肥満度とヒゲの長さに関する文献はみつかりませんでした。確かに肥満猫はヒゲが長いことが多いと感じますが、短いままの猫もおり、「デブ猫はヒゲが長い」ということは一概には言えないでしょう。

ヒゲと猫白血病ウィルスの話

最近国内で、洞毛が波状である猫は猫白血病ウィルス(FeLV)に感染している確率が高いと報告されました。この論文では2カ所以上の折れ曲がっている部位を持つ洞毛が2本以上あった場合を波状洞毛をもつ猫と定義しています。猫白血病ウィルスに感染している猫の洞毛を調べたところ洞毛髄質が断裂していたり、小さくなっていることがわかりました。そのようなことが起こるメカニズムや時期については現在のところ不明であり、さらなる研究が必要と述べられています。

(波状洞毛を持つネコの白血病陽性率に関する検討)

もともと被毛にパーマがかかっているラパーマやセルカーク・レックスなどの猫種はヒゲも波状になっています。また扉に挟んだりして、ヒゲが折れた場合などはもちろん白血病ウィルスとは関係ないでしょう。ヒゲが曲がっている=白血病ウィルスに感染している、ではないので注意しましょう。

まとめ

ネコのヒゲは実に多岐にわたる働きがあることがわかりました。猫の身体能力が注目されますが、それはヒゲのおかげでもあるのですね。猫のかわいい理由にヒゲをあげる人はあまり聞きませんが、改めて猫のヒゲを見てみると猫のなんともいえない表情を作るのに重要なパーツのようにもみえてきます。

 

“猫のヒゲ 〜洞毛の実力とその謎〜” への13件のコメント

  1. はじめまして!突然申し訳ございません。
    猫の首の後ろにできものができてとてもかゆそうなので、毛をすこし刈ってお薬をつけてあげたいのですが、(去年も同じようなものが出来て、その際に刈ってもらい塗り薬をいただきました。)画像の赤色の○、頬部のひげを誤って刈ってしまったらどうしようと不安で尻込みしております。
    やはり頬部のものも刈ってしまったら良くないでしょうか?
    高齢で車も嫌いなためあまり病院には連れていきたくないので、なるべくならお家で処置してあげたいです。
    お手数ですが教えていただけるとありがたいです。

    1. maさん
      こんにちは。頬部のひげですが、もちろん切らない方がいいですが切ってしまっても大きな問題になることはないです。特に室内飼いであればなおさらです。頬部の外傷があるときはやむをえずヒゲを剃ることもあります。

  2. はじままして。
    猫の髭で検索をしていたら、こちらに辿りつきました。
    我が家には、兄弟猫(オス)が室内飼いでいるんですが・・・
    一匹は、綺麗に長い髭があるんですが・・・
    もう一匹は、髭もどちらかと言えば短く長くないのです
    おまけに、片方だけなぜか?枝毛が数本あります。
    なにかの病気の症状なのか心配です。
    枝毛の髭は、切っては駄目ですよね?

    1. おたかさん
      こんにちは。私が知る限り、ヒゲが短くなったり折れることが特徴的な猫の病気はありません。今回白血病ウィルスとヒゲの関係の研究を紹介しましたが、本当に白血病ウィルスの影響なのかはさらなる検証が必要です。おたかさんのネコちゃんが心身ともに健康であれば気にしなくても大丈夫でしょう。
      枝毛のヒゲは切らない方が良いです。

      1. ご回答有難うございます!
        食欲もあり、二匹で元気に部屋の中を走り回っていますし
        排便もしっかり、かりんとう的な物が出ています!
        少し安心しました。
        やはり、枝毛でも切らないのがいいのですね!

  3. こんにちは。アルビノ猫について調べていましたら先生にたどり着きました。
    子猫を保護したらどうやらアルビノでした。
    なかなか飼育が大変そうですが、頑張ってみようと思います。
    まず、この仔はヒゲが伸びません。
    ある程度伸びたらいつの間にかなくなっていますが、大丈夫なんでしょうか⁉️
    あと、ワクチンを1回接種しましたが、副作用がひどくて2回目を受けるのを悩んでいます。
    もう1点、ワクチンがそんな状態で、そろそろ避妊手術をする月齢になったのですが、こちらも不安になっています。
    よろしくお願いします。

    1. ナカヤさん
      こんにちは。
      ヒゲが伸びないのとアルビノが関係しているかは不明です。おそらく関係ないと思いますが、アルビノ猫の数が少ないので解明が困難です。本文でも触れていますが、室内猫であればヒゲがなくても生活に支障はないです。

      ワクチンは7種ワクチンでしょうか、白血病ウィルスを含んだワクチンは発熱や元気消失などの副作用がでることがあります。一度強い副作用が出た場合はワクチン摂取を中止することもあります。中止した場合は室内飼いを徹底し、他の猫との接触を防いでください。

      避妊に関しては検査上他に問題がなければアルビノだから受けられないということはありません。避妊手術を希望であれば主治医の先生と相談してみてください。

  4. はじめまして。猫について調べるうちにこちらのブログにたどり着きました。
    親猫1匹・子猫4匹飼っているのですが、子猫1匹だけ他の子猫3匹にヒゲを噛みちぎられてヒゲがほぼない状態です。
    イジメられているのか、室内外をしているのでストレスなのか…
    ヒゲが無いせいで少し動きも鈍いような気がしてきます。
    何が原因なのかが分からず不安で、もし考えられる事があればと思い、メールを致しました。
    よろしくお願いします。

    1. ミゾグチ様
      こんにちは。室内飼いでは猫の数以上部屋がないとストレスを感じることがあります(今回では5+1で6部屋以上)。今回はウィルスとヒゲの関係について新しい報告を紹介しましたが、実際には猫のヒゲに関する病気は殆ど報告されていません。猫同士でヒゲだけを攻撃する例はあまり聞きませんので、根本的なストレスが原因になっているのかもしれません。

      1. ご回答ありがとうございます!
        やはりストレスなども考えられるのですね…
        もっと猫が過ごしやすい環境を作っていきます。
        これからも猫ブログで勉強させて頂きます。
        ありがとうございました!

  5. はじめまして、面白い内容ばかりでますます猫がかわいいと思うようになりました。

    うちの猫の茶トラ6歳が糖尿病なのですが、この子だけヒゲが枝毛だらけなのです。
    やはり糖尿病のせいでヒゲが伸びないで折れてしまうのでしょうか。
    ヒゲが枝毛でかわいそうだけど、マンガみたいでかわいいですけどね!
    ヒゲはタンパク質と聞き、タンパク質の物が足りないのでしょうか?
    何かヒントがあればと思いメールしました。
    よろしくお願いします。

    1. オオツキさん
      こんにちは。感想ありがとうございます。
      糖尿病の猫がヒゲが分かれてしまうという話は聞いたことはないですね。
      キャットフードを与えていて糖尿病がコントロールとれていればタンパク質が不足することはないです。糖尿病で皮膚が弱くなることはありますが、関連性は不明ですね。
      糖尿病は治療が大変だと思いますが、引き続き可愛がってあげてください。

      1. お返事ありがとうございます!

        なかなか難しい治療ですが、頑張ってかわいがって行こうと思ってます。
        ありがとうございました!

コメントを残す