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あるとき少年に「ネコとイヌはなにがちがうの?」と聞かれうまく答えられず歯がゆい思いをしました。いろいろなところが違いますが、今回は動物が生きていく上でもっとも重要な脚と歯についてネコとイヌを比較してみましょう。

性格の違いについてはこちら

生活環境の違い ネコ科は森、イヌ科は平原

最も簡単にネコ科とイヌ科の違いを説明すると生活環境の違いをあげることができます。ミアキス(ミアキスについてはこちら)のような動物が森に残り樹上で生活したのがネコ科、平原に出て地上で生活したのがイヌ科に進化したという話は聞いた事があるでしょう

しかし少年は「ネコ科でもライオンやチーターは平原にいるよ」と反論するでしょう。その通りです。イヌ科でも森の中に入ったタヌキもいます。

しかし平原に出たネコ科も、根本的なネコ科の特徴は失いませんでした。ではどのようなものがネコ科の、そしてイヌ科の根本的な特徴なのでしょうか。哺乳類が生き残る上で最重要なパーツである脚と、歯の特徴について注目してみましょう。

草食動物は逃げるために、肉食動物は追いつくためにそして捕らえるために脚をひたすら進化させました。奇蹄目などは脚の形が目(モク)の名前になっていることから、脚の形が生物分類で非常に大きな影響を与えている事が分かります。

猫犬の脚の話の前に少し他の動物にも触れておきます。ウマやウシのように走る事に特化し蹄のみが地面につくことを「蹄行(テイコウ)」、サルやクマのように歩くときに踵がつくことを「蹠行(セキコウ)」と呼びます。

蹄行はまさに走るだけですので、非常に単純な構造ですがその分走るのが速いです。蹠行動物は走るよりも、物を掴むなど手先の器用さを優先さた結果複雑な構造になりました。蹠行だと地面の設置面積が広いので2足でも安定して行動する事ができ、二足歩行を可能にするきっかけになりました。

ネコ科とイヌ科の脚

逃げる側の草食動物は逃げるだけでいいですが、追う肉食動物は捕まえて殺す武器が必要です。もちろん鋭い犬歯と強力な顎は有効な武器ですが、多くの肉食動物は鋭い爪をもっています。ネコ科とイヌ科は踵を浮かせた状態で歩く「趾行(シコウ)」を選びました。趾行は蹄行と蹠行の中間といったところでしょうか。走る速さと、手先の器用さを兼ね備えた形です。

違いその1 爪

イヌ科とネコ科との違いは、イヌ科は爪が出し入れできないという点です。爪を動かす筋肉や骨を残したネコ科は、同じ趾行でもイヌ科より複雑な構造をしています。爪の出し入れは木登りにも役立ちますし、爪をしまえば静かに獲物に忍び寄る事が出来ます。草原に出たイヌ科は木登りをしなくていいので爪は単純なスパイクとしての役割で十分だったのでしょう。その証拠にその後誕生したチーターはネコ科で唯一爪をしまうことができません。地上最速を目指した結果チーターは爪をしまうことをやめました。

違いその2 鎖骨

鎖骨は脚ではありませんが、前肢を動かす重要な構造です。ネコ科には鎖骨がありますがイヌ科にはありません。鎖骨がないとおもに抱きつく動き(腕の内転)が困難になります。内転ができないと木登りができません。イヌなどの草原にでた動物はみな鎖骨が退化してなくなっています。やはりチーターは鎖骨がありません。地上最速の陰にはいろいろなものを犠牲にしているのです。

蹄行性の草食動物や、イヌ科よりも複雑な構造な四肢を持つネコ科ですが走るスピードも速いです。ネコ科は獲物を捕らえる爪を持ったまま蹄行動物にも負けないスピードを出すために猫は体幹の筋肉を使って補いました。背骨を曲げて反動をつける事で一歩のストライドを伸ばします。しかしこの体幹の筋肉は(脊柱起立筋)は持久力がありません。ネコ科はスピードと器用さのいいとこ取りですが、その代わりに持久力が犠牲になったというわけです。

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空中で背中を丸めるチーター。背筋を使ってスピードを出す

 

それぞれの食事に合わせて、歯の形は多様に進化しました。草食動物は植物をすり潰すために臼のように平らな歯をもっています。肉食動物は確実に獲物を絶命させるために犬歯が発達しました。犬歯を首に打ち込む事で脊髄の破壊、頸動脈の切断、気管の圧迫など致命的なダメージを与える事ができます。そして奥歯は肉を噛み切るためにハサミのような構造をしており「裂肉歯」と呼ばれます。

違いその1 犬歯

犬歯の大きさは獲物の大きさに比較します。犬歯が最も発達したサーベルタイガー(マカイロドゥス)はゾウやサイのような大型草食獣を捕食していました。単独で狩りをするネコ科は短時間で獲物を殺したいので首を真っ先に狙います。そのためより犬歯が発達しました。

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スミロドンの頭蓋骨 現存するネコ科動物の犬歯は円錐形だが、スミドロンの歯はナイフのような形をしていることから剣歯虎と呼ばれる

イヌ科も犬歯は発達していますが、ネコ科ほどではありません。集団で長時間狩りをするイヌ科は、お腹や脚を攻撃して動きを鈍らせていきます。必ずしも首を狙うわけではないため、ネコ科程犬歯は発達しなかったのでしょう。

違いその2 奥歯(臼歯)の数

奥歯の役割は食べ物を噛み砕くことです。ネコ科の食べ物はお肉です。そのため肉を切る歯(裂肉歯)以外必要なく、奥歯の数は最小限になりました。ネコ科の歯は(I3/3 C1/1 P 3/2 M1/1)の計30本しかありません。しかも上顎の後臼歯(M)は退化し殆ど機能していません。

それに比べイヌ科の歯は(I3/3 C1/1 P4/4 M2/3)の計42本もあります。その差12本。イヌ科は肉以外の食べ物も食べられるよう裂肉歯の後ろに噛み砕くときに使う後臼歯が残っています。

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ネコの歯が単純化し本数が減ったことがわかる

 

さて今回は脚と歯に絞ってネコとイヌを比較しましたが、性格、社会構造、臓器、目や鼻等の感覚器、歴史などネコとイヌの違いは上げればきりがありません。今後1つづつ調べてみようと思います。

 

“ネコとイヌの違い 歯と脚” への7件のコメント

  1. はじめまして。いつもなるほど~~!と読ませていただいています。
    猫は奥歯があまり発達していないということは、ドライフードなどは向いていないのでは?と気になりました。

    私のウチにも生後10ヶ月程の猫がいて、ドライフードを基本的に与えているのですが、たまに丸飲みしているように見えます。ウェットフードが一番いいのかもしれないですが、毎日はちょっと大人の事情で厳しく…。ふやかすといいとも聞いたのですが、ふやかすとおいしくないのか食べません。

    そのあたりをもしよろしかったら、教えていただけましたらありがたいです。
    よろしくお願いします。

    1. トランママさんこんにちは。
      人間はよく噛んで食べないと消化に悪いといわれますが、ドライフードは丸呑みしても問題ありませんよ。

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