犬がキシリトールを摂取すると低血糖や肝臓障害を起こし大変危険です、一方猫が食べたらどうなるか?これについてはあまりよくわかっていませんでした。獣医学の専門書でも猫には触れていなかったり、web上の記事でも「念のため避けておきましょう」といった説明になっていることが多いです。そんな中、比較的最近の研究で、猫に対して実際にキシリトールを投与したものがありましたので、ご紹介します。

 

題:猫におけるキシリトール経口摂取の影響

要約 Abstract

目的:キシリトールは家庭でよく使われる砂糖の代用品です。人々の健康に有益な作用がありますが、犬に対しては強い毒性があります。この研究の目的は犬で起こるような低血糖や肝障害などの有害作用が猫にも起こるのかを調べることです。

方法:今回の研究では6頭の健康な中年齢の猫に純水に溶いたキシリトールを3パターンの容量(体重1kgあたり100mg、500mg、1000mg)で投与しました。これは犬において肝障害や致命的な中毒を起こしうる量です。キシリトールを投与後、健康状態と血糖値を毎回確認しました。さらに投与前、投与後6時間、24時間、72時間に以下の項目の血液検査を実施しました。

全血球計算、肝臓酵素(ALT、ALKP、GGT、GLDH)、胆汁酸、血液尿素窒素、クレアチニン、リン、総蛋白、アルブミン、ナトリウム、カリウム

結果:投与前と比べて、投与後で血液検査に有意な変化はありませんでした。血糖値の変化は1000mg/kg 投与した時だけ有意な上昇を認めましたが、生理的な範囲内でした。

結論:今回の研究ではキシリトールは猫に対して有害作用を起こしませんでした。

補足

・犬では体重1kgあたり100mgでも症状が現れることがあり、500mgで致命的な肝臓毒性を起こすことがある

・過去にキシリトールを微量に溶かした水を猫に与えることで歯垢・歯石の蓄積を予防するという報告がある

コメント

検証した頭数が少ないですが、1kgあたり1000mg投与して有害作用が出ていないのでキシリトールは猫に対して重篤な毒性は出ないと考えて良いと思います。ASPCA(米国動物虐待防止協会)の最近のコラムでも猫では低血糖や肝障害は起こさないと表記しています。

また本文には低容量のキシリトール水が歯石予防に効果的であった研究を引用していましたが、猫用のサプリでキシリトール入りのものは聞いたことがありません。キシリトールを摂取しすぎると下痢をしますし、猫に必要な栄養素ではないのであえて与える理由はありません。

※このコラムは猫に対してキシリトールの投与を推奨するものではありません。また猫がキシリトールを摂取して体調が悪い場合はかかりつけの動物病院にご相談ください

 

参考資料

Jerzsele, Á., et al. “Effects of po administered xylitol in cats.” Journal of veterinary pharmacology and therapeutics 41.3 (2018): 409-414.

Clarke, David E. “Drinking water additive decreases plaque and calculus accumulation in cats.” Journal of veterinary dentistry 23.2 (2006): 79-82.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。