前回のブログでは、ウェットフードの方が歯周病になりやすいという報告を紹介しました(詳しくはこちら)。ではドライフードの方が良いのかというと、一概にそうとも言い切れません。今回はドラフードの方がなりやすい病気、尿管結石について具体的な数字が出ていた論文があったでご紹介します。

尿管結石とは

腎臓と膀胱をつなぐ管を尿管とよび、そこに結石ができることを尿管結石といいいます。人間の尿管結石は男性に多く、激痛を伴うことが知られていますが、猫では性別による差はなく、また不思議と人間ほど痛みを呈することもありません。片方だけの場合は症状がないことあり、健康診断で偶然発見されることもあります。

猫は膀胱結石や尿道結石(下部尿路結石)が多かったのですが、近年は尿管結石や腎結石(上部尿路結石)が増えています。その理由として、超音波検査の機械が進歩して尿管結石を見つけやすくなった、猫が長生きするようになった(尿管結石の発症年齢は8歳前後)ことが挙げられます。

尿管結石は下部尿路結石に比べて手術難易度が高く、現在最も厄介な猫の病気の1つです。両側の尿管が閉塞すると、腎不全に陥り命の危険性があります。

尿管結石のリスクを調べた論文

この研究では尿管結石を起こした猫を過去に遡って調べて、尿管結石のリスク因子になっているものを探しました。その結果、食事のタイプが最も大きなリスク因子になっており、ドライフードを主食にしているの猫は、ウェットフードを主食にしている猫の15.9倍も尿管結石になりやすい、という結果が出ました。

それ以外には猫の品種、性別、飼育環境(外飼いor室内飼い)についても調べましたが、発症率に有意な差は認めませんでした。

ウェットを主食にしている猫が圧倒的に発症率が低い。人では男性に多いが猫では性別は関連性はなさそう

ドライとウェットどっちがいいの??

前回の歯周病とウェットフードの関係のコラムと合わせて考えると、ドライとウェット、どっちの方が良いか断言することはできません。尿管結石は急変して命の危険がある疾患であり、手術ができる病院の限られます。歯周病も慢性腎臓病のリスクを高めることがわかっており、慢性腎臓病はやはり寿命に強く影響します。

今回の論文では、ウェットフードとドライフードを両方与えている場合は、ドライだけの猫よりも尿管結石のリスクは少ないと報告しています。そのため「ドライとウェットどちらかだけではなく両方を与える、そして歯周病予防のためにデンタルケアを行う」というのが今のところ良いのではないかと考えています。

参考資料

・Kennedy, A. J., & White, J. D. (2021). Feline ureteral obstruction: a case-control study of risk factors (2016–2019). Journal of Feline Medicine and Surgery, 1098612X211017461.

“ドライフードの方がなりやすい猫の病気” への1件のコメント

  1. うちでは、今のところ仕事で不在の日中はドライフードを自動給餌器で食べさせて、夜はウエットをあげています。
    そして歯磨きもしています。
    まだ上手く磨けませんが、猫たちもだいぶ慣れてきているので、これを継続していきます。
    ^_^

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