ズッキーニやキュウリは蛇に似ているため、猫が嫌がるという話もある。うちの猫は大丈夫でした

ズッキーニを食事混ぜることで、シュウ酸カルシウム結石の発生を予防できる可能性がある、という論文が出ていましたので読んでみたのでご紹介致します。

・シュウ酸カルシウムとは

シュウ酸カルシウムは1、2を争う頻度で見られる尿路結石の種類の1つです。文字通りシュウ酸とカルシウムからなる結石です。シュウ酸カルシウムは療法食で溶解できない結石であり、閉塞した場合は手術で取り除く必要があります。また腎臓や尿管にできやすく、この部位にできると手術で取りにくいという点も厄介です。形成する原因は解明されておらず、単純に食事中のカルシウム摂取量を減らすだけでは予防効果はありません

・論文の要約

獣医栄養学の専門家であるこの論文の筆者は、経験的にズッキーニを含む手作り食が尿路結石の再発予防に有効であるという実感を持っていました。今回の論文ではズッキーニを含む手作り食と、ズッキーニを添加した市販のドライフードを猫に与え、尿への影響を比較検討しました。

食事の種類は5種類、①市販の尿路結石用療法食/ウェット、②市販の尿路結石用療法食/ドライ、③ズッキーニ入り手作り食、④市販の総合栄養食/ドライ、⑤ズッキーニを④に足した総合栄養食/ドライ、を比較しています。

それぞれの食事を7日間与え、尿を採取し尿パラメーター、相対飽和度(RSS)※を測定しました。

 

※RSS:相対飽和度(Relative Super Saturation):尿中に存在する各種の化合物(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、アンモニア、尿酸、シュウ酸など)が、その飽和濃度に対していどれだけ過剰に存在しているかを示す数値です。RSSが高いほど、尿路結石のリスクが高いと考えられています。RSSはそれぞれの結石ごとに計算式が異なります。

縦軸シュウ酸カルシウムのRSS。U-dry=①市販の尿路結石用療法食/ドライ、U-WET=②市販の尿路結石用療法食/ウェット、HOME=③ズッキーニ入り手作り食、DRY=④市販の総合栄養食/ドライ、DRY-Zuc=⑤ズッキーニを④に足したドライ

結果:

・シュウ酸カルシウム結石のRSSが最も低かったのは③ズッキーニ入り手作り食でした。

・①市販の尿路結石用療法食/ウェットと②市販の尿路結石用療法食/ドライでは有意差はありませんでした。

・⑤ズッキーニを④に足した総合栄養食/ドライは、ただの④市販の総合栄養食/ドライよりもシュウ酸カルシウムのRSSが有意に低下しました。

・ストルバイト結石のRSSはグループ間で有意な差はありませんでした(グラフ内には掲載なし)。

※ストルバイト結石:シュウ酸カルシウムと1、2を争う頻度で見られる尿路結石の種類の1つ。シュウ酸カルシウムと違い、食事療法で溶解する。

結論:バランスの取れたズッキーニ入りの手作り食が最もRSSを下げることがわかった。またドライフードにズッキーニを加えるだけでRSSが低下する可能性が示された。

・ズッキーニの特徴

ズッキーニはウリ科の植物で、シュウ酸とその前駆体であるアスコルビン酸の含有量が少なく、また水分含有量が多く、カロリーが少ないという特徴があります。もともとこの筆者はカロリーを増やすことなく、食事の量を増やすために入れていたとのことでした。

・ズッキーニの投与方法

5mm角なのでもう少し小さくて良いです

5mm角のキューブ状にカットし、1日量として体重1kg当たり10gを目標に食事混ぜます。最初は数粒から混ぜていき、徐々に増やしていきましょう。

・この論文の注意点

この論文の最大の注意点はズッキーニを添加することでRSSを下げることを示唆しましたが、実際にシュウ酸カルシウム結石の予防効果を証明したわけではありません。というのもシュウ酸カルシウムの形成のメカニズムは解明されておらず、RSSが実際にどこまで発症と関係しているかわかっていないからです。

反対にこの論文でRSSが低く出ている療法食(①、②)を食べていても、再発することを私もしばしば経験しています。発症しない猫は全くしないので、近年ではシュウ酸の代謝に関する遺伝子の違いがなりやすさに影響しているのではないか、という指摘もあります。

・まとめ

ズッキーニを足すだけシュウ酸カルシウムのRSSをかなり下がったというインパクトのある結果が出ました。下がった理由ははっきりとは記述されていませんが、水分摂取量の増加などが働いた可能性があります。シュウ酸カルシウム結石は猫医療で非常に困っている病気ですので、発症/再発が予防できるようになると、助かる猫が増えるでしょう。

現時点では水分をしっかり摂ること、尿路結石用療法食するというのが再発予防の原則になります。ズッキーニの添加や、この論文に出てきた手作り食を考えている方は、必ず栄養学に精通した獣医師と相談してレシピを組んで使用を検討してください。

参考資料

Blanchard, G., Amato, C., André, A., Bleis, P., Ninet, S., Zentek, J., & Nguyen, P. (2022). Beneficial effects of a prescription home-prepared diet and of zucchini on urine calcium oxalate supersaturation and urinary parameters in adult cats. Journal of Feline Medicine and Surgery24(12), 1203-1211.

 

“ズッキーニがシュウ酸カルシウム結石の予防に有効な可能性” への1件のコメント

  1. 猫と暮らす一般人ですがとても興味深いお話でした。気になることがあればかかりつけの意見+こちらを覗くようにしています。いつもありがとうございます。

ねこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。