(抱っこした時に軽くなったと感じませんか?)

猫の寿命は年々伸びています。高齢になるにつれて、猫も筋肉が落ちて痩せていきます。しかし病気で痩せているかもしれません。実際に「高齢なので痩せたと思っていた」という問診を得て、検査をしたら病気が発見されることは少なくありません。ただし体重の減少が、加齢によるものなのか、病気によるものなか見極めるのは獣医師であっても難しいです。

人医療でもずっと肥満だった人がダイエットをしていないのに体重が減り喜んでいたら、後々病気が原因だったということは少なくありません。人の場合は自覚症状があるので、まだ気付きやすいですが猫の場合は飼い主さんが気づいてあげなくてはいけません。

・高齢猫で体重が減る病気

高齢の猫で一般的に見られる病気です。ほとんどの病気で体重が減りますが、糖尿病や甲状腺機能亢進症は特に減少スピードが早いので注意です。内臓に問題がなくても、骨関節炎や歯肉炎など痛みが原因で食べなくなっていることもあります。

慢性腎臓病 糖尿病 甲状腺機能亢進症
炎症性腸症(IBD) がん 胆管肝炎
膵炎 骨関節炎 歯肉炎

 

・猫の体重減少の基準

それではどのくらい体重が減っていたら危険と考えれば良いでしょうか。1ヶ月で5%以上減っていたら注意です。そして10%以上の場合は深刻な病気があるかもしれません。猫の病気を早期発見するには少なくとも毎月1回は体重を測ってあげましょう。

減量率(%)=100 – (現在の体重÷元の体重)×100
5%以下 要観察
5〜10% 病気の可能性
10%以上 深刻な病気の可能性

 

例1)先月体重8kgの猫が7.1kgになっていた場合

減量率=100 – (7.1 ÷ 8) ×100=11.25%

→深刻な病気の可能性あり

例2)先月体重3.2kgの猫が3kgになっていた場合

減量率=100 – (3 ÷ 3.2) ×100=6.25%

→病気の可能性があるので検診を検討

体が小さい猫は数100g体重が減っていても過小評価されてしまいがちです。減ったグラムがどのくらいの割合を占めているのかが大事です。

60kgの人の場合5%で3kg減、10%で6kg減です。ダイエットをしていないのにこのぐらい落ちたら心配ですよね。特に6kgも体重が減ると周囲の人も気がつくと思います。

・記録を残そう

このグラフは半年に渡るある猫の体重の推移です。6月から7月の減少率が最も大きですが、それでも4.3%です。その後も月単位では5%以上の減少はありません。

しかし、5月から10月への体重減少率を計算すると10.6%あります。特別ダイエットなどをしていない場合は、数ヶ月に渡っていても10%以上の体重減少は病気の可能性が高いので注意です。

 

こちらで作れます→ http://www.kao.co.jp/nyantomo/care/howto/download/index.html

こちらは花王の泌尿器の病気の猫用の健康管理シートですが、その他の欄に体重を記録しておくと良いでしょう。1ヶ月おきに測るならこれ1枚で1年間持ちます。

アプリで管理したいと思い、いくつかダウンロードしましたがあまりお勧めできるものはありませでした。良いものが見つかったらご報告します。

・おすすめの体重計

ペット用のものも発売されていますが、当院でも使っているこちらがおすすめです(タニタ ベビースケール)。下の写真のように部屋の角で測ると逃げられずうまくできます。

まとめ

体重は猫の異変に気がつくので最も大事な項目だと思います。「尿量・飲水量が増える」「毛並みが悪くなる」なども高齢猫の病気のサインですが、尿量は測るのが難しいですし、毛並みもどのくらいで悪いと判断するのかわかり辛いです。その点、体重は簡単に測定でき、数字で記録されるのでとても客観的です。

そして一番上の画像ですが体重の減少は緩やかなので毎日抱っこしている人は気が付きません。もし減っていると感じた場合はかなり痩せていると考えられます。むしろ半年ぶりに猫を抱っこした人の方が気が付きやすいです。必ず体重計で記録しましょう。そして1ヶ月で5%以上減ったら要注意、10%以上は深刻な病気が疑われます。決して「年をとったから」と見過ごさず、病気を早期に発見することが大切です。体重は愛猫の長生きのためにぜひチェックしてほしい項目です。

参考資料:Royal Canin Veterinary Symposium 2017 高齢猫の体重減少 サイレントな病気の診断と治療

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