つい最近、マタタビについてまとめましたが、新しい情報が入ってきたので再度紹介します。以前からマタタビの研究をしていた岩手大学のチームから、マタタビの安全性を示す論文が発表されました。結論から言うと、長期間マタタビを使用しても体に毒性や依存性がないことが改めて明らかになりました。

・依存性、なし

猫はマタタビに接触すると、ヒトの報酬効果に関するμ(ミュー)オピオイド系が活性化して多幸感を得ていることがわかっていました。μ(ミュー)オピオイド系とはモルヒネに代表される、麻薬規制されている薬物でも作用することが知られています。

そのためあまりマタタビを与えすぎると依存症になるのでは?と意見は以前からありました。依存性物質をネズミや他の霊長類に与えると、自分の意思で使用を止めることは困難になります。

この研究中では長時間(4時間)、猫がマタタビエキスを染み込ませた濾紙に自由にアクセスできる環境を用意しました。しかし猫はマタタビ反応を示す時間は少なく、グルーミングや睡眠などの通常の行動が大部分を占めました。

さらにマタタビ反応は最初の1回目と比べると、2回目以降は短くなりました。結論として、猫は自分でマタタビの使用を抑えることができ、の依存症の定義に当てはまりませんでした。そのため、依存性はないと考えらます。

・ストレス反応、なし

マタタビを摂取した前後で、ストレスのマーカーとなるグルコースとコルチゾールを測定しました。結果としてグルコース、コルチゾールの血中濃度はマタタビを与えても上昇していませんでした。

・腎毒性、肝毒性、なし

マタタビの有効成分であるイリドイドを長期投資(最大3.2年)し、腎臓のマーカーであるクレアチニンとSDMA、肝臓が障害を受けると上昇するALTを測定しました。結果として、これらの結数値悪化させることはなく、長期的な毒性は認められませんでした。

参加した猫の期間の中央値は569日で、マタタビ反応を経験した回数の中央値は26回でした。投与頻度を計算(569÷26=21.9日)すると3週間に1回ほど投与されている計算になります。これくらいの頻度であれば問題ないということがわかります。

まとめ

以上のことからマタタビは安全性の高い嗜好品であることがわかります。室内飼育ではどうしても刺激が少なくなってしまいますが、カロリーがなく、依存性もないマタタビは環境エンリッチメント(動物にとっての豊かな暮らし)の面でも有用でしょう。獣医師側としては、この研究のおかげで「マタタビをどのくらいあげていいの?」という質問に対して、自信を持って回答できるようになりました。欲を言えば、何日連続であげていいか、限界量を知りたいですが、そういった研究は現代では倫理的な理由から実施できないでしょう。実際には猫はマタタビを与えると、しばらく反応が弱くなりますので、1〜2週に1回程度が適量であり、安全量なのではと感じます。

 

参考資料

Uenoyama, Reiko, et al. “Assessing the safety and suitability of using silver vine as an olfactory enrichment for cats.” iScience (2023).

 

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