マタタビを取り合う姉妹

最近はちゅ〜るなどの液体系トリーツに押され気味ですが、猫の嗜好品の元祖といえばマタタビでしょう。マタタビを嗅いだ猫は、酔っ払ったようにゴロンゴロンと体をねじらせ、トローンとした目になります(通称マタタビ反応)。最近の研究でマタタビを与えられた猫は、オピオイドのμ受容体が活性化していることがわかっており、多幸感を得ていると考えられます。

マタタビ反応はネコ科に特異的な反応で、ライオンやヒョウなどの大型ネコ科動物もマタタビに反応します。ライオン等のヒョウ属と猫が属するネコ属が分化したのが1000万年前であることを踏まえると、少なくとも1000万年前からネコ科はマタタビを楽しんでいることになります。

 Johnson, W. E.; Eizirik, E.; Pecon-Slattery, J.; Murphy, W. J.; Antunes, A.; Teeling, E.; O'Brien, S. J. (2006). «The late miocene radiation of modern Felidae: a genetic assessment». Science 311 (5757): 73-77. PMID 16400146. doi:10.1126/science.1122277.
ネコ科動物の系統図。ネコ科の動物はみんなまたたびに反応する。 Johnson et al. (2006)による現生種の分岐図

マタタビ反応を起こす主成分

なぜネコ科動物だけが反応するかという謎は、多くの科学者の興味を集め研究が進められてきましたが、いまだにはっきりした理由はわかっていません。日本人の研究者が、マタタビ中の成分を調べ、いくつかの活性物質がマタタビ反応を起こしていることを突き止め、それらをまとめて「マタタビラクトン」という名前をつけ発表したのが1959年のことでした。キャッチーな名前から、マタタビラクトンという名前はネコ好きの間では知っている方もちらほらいます。

その後マタタビと同じ反応を示す植物、キャットニップの研究でネペタラクトンという成分が発見され、それを踏まえてマタタビを調べ直したところネペタラクトールが見つかり、マタタビラクトンよりも長時間マタタビ反応を起こすことがわかりました。現在ではマタタビ反応を起こす主成分はネペタラクトールであるとされています。

マタタビの意外なメリット

猫はマタタビを多幸感を得るためだけに摂取しているのでしょうか。生存に有利な特徴が世代を超えて引き継がれるのは生物の常識です。猫がマタタビを摂取するメリットとして、蚊の忌避に効果があるという説があります。猫にマタタビを与えると顔を擦り付けますが、これは蚊に刺されやすい頭部にマタタビの成分を付着するためと考えられます。

またたびに反応しない猫が一定数いる謎

猫の30%ほどはマタタビやキャットニップに全く反応しません。蚊を寄せ付けないためにだけにマタタビを摂取しているとしたら、反応する猫としない猫がいるのはおかしなことです。しかし、現在でもマタタビ反応が出る猫と、出ない猫の違いとなる、原因遺伝子は明らかになっていません。もしそれが特定できればマタタビの謎がまた1つ解明されます。

どのくらいあげていいか?

残念ながら、猫がどのくらいマタタビやキャットニップを摂取していいかを科学的に検証したデータはありません。しかしキャットニップについては毒性植物をリスト化しているASPCAのサイトにも嘔吐、下痢、鎮静などの副作用が示されています。マタタビ反応を起こすには1つまみ、粉末であれば1振りで十分ですので、反応を起こす量以上は与えないようにしましょう。またてんかんなど発作の持病がある猫は興奮作用によって悪化する可能性があるので使用しない方が無難でしょう。頻度としては、経験的に私は週1回未満にしています。

まとめ

近年解明されてきたことは、マタタビ反応を示す主成分がネペタラクトールであったこと、そして蚊を避けるためにマタタビを顔の擦り付けていたのでは、ということです。まだ謎な点は、マタタビ反応を起こす遺伝子、なぜ反応する猫としない猫がいるのか、というところです。最近は色々なトリーツが出ていて、私も久しぶりに愛猫にマタタビを与えました。思ったより酔っ払ったようなマタタビ行動は見られませんでしたが、少なくともストレス解消にはなっていそうです。

参考資料

・生物の科学 遺伝 2023.vol3 ネコにマタタビ-その特異な行動の謎

 

 

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