猫は好奇心が強いもの、特に若い猫はなおさら何にでも興味を示す

猫がゴムやビニール、そしておもちゃなどの異物を飲み込んでしまうことがあり、それを異物誤飲といいます。犬に比べると異物誤飲は少ないですが、猫は紐を飲み込むことが犬よりも多いです。これは猫の舌がザラザラしており、巻き込んでしまうためと考えられています。ひも状異物は腸管を引き裂いてしまうことがあり、より危険性が高いです。

イギリスのことわざに「好奇心は猫を殺す」”Curiosity Killed the cat”という恐ろしい言葉がありますが、タフな猫であっても好奇心が原因で命を落とすことがあるという意味です。転じて「過剰な好奇心は身を滅ぼす」と戒めるために使われる言葉です。

まさに好奇心がありすぎる猫。異物誤飲は若い猫(3歳未満)で発生することが多いです。今回は実際にあった猫の異物症例を写真をまじえて解説していきます。今回紹介したものが自宅に転がっていないか気をつけながら読んでいただけると幸いです。

※一部手術の写真などが含まれます

1.鈴

モノ:おもちゃについていた金属製の鈴。

対処方法:自然嘔吐による排泄

コメント:鈴を飲み込んだと来院されました。レントゲン検査で胃内に金属製の球体が発見されました。胃内だったので内視鏡で取り出そうか相談していたところ、自力で吐いたため麻酔をかけずに済みました。

2.おもちゃ

モノ:紐の先端についているクッション素材のおもちゃ

対処方法:開腹摘出

コメント:超音波検査で腸管に何かが詰まっている像が確認されました。超音波が物体にぶつかると、その先に届かないため左図のように画面が黒くなります。小腸にがっちり嵌っていたため、開腹して切除しました。詰まっていたのは遊び尽くされたおもちゃの先端でした。

3.ねずみのおもちゃ

モノ:ねずみのおもちゃ(リアル獣毛)

対処方法:内視鏡摘出

コメント:リアル獣毛で作られたおもちゃは、猫が本物だと思って食べてしまうので、特に気をつけましょう。リアル獣毛のおもちゃは定期的に飲み込んだ猫が来院するので、安全性を考慮するとリアル絨毛は避けたほうが良いかもしれません。写真の右2つは胃から摘出されたもの、一番左は家から持ってきてもらった新品のおもちゃです。ガシガシ噛んだ跡があります。胃内に残っていたので内視鏡で取り除くことができました。

4. ひも状異物

モノ:ゴム製の靴紐

対処方法:開腹摘出

コメント:左図のレントゲンの白い陰影はバリウムです。バリウム検査で十二指腸が蛇行しており、肉眼で見ると右上図のように腸がくしゃっと縮まっています。これをアコーディオン状と表現します。長い靴紐が入っており、いくつかに切断して摘出しました。

5.ひも状異物 ボール付き

黄色丸:穿孔部位。穴が空いていたので縫っているところ

モノ:おもちゃのボール

対処方法:開腹摘出

コメント:より細いひも状異物で、先端にボールがついてました。発見が遅かったため、一部消化管に穴が空いてました(左図:黄色丸)。紐があるにも関わらず、なんども消化管が動いて引っ張られるとノコギリのように腸を裂開させてしまいます。これは細い糸の方が起こりやすいので、細いひも状異物は危険性が高いです。

6.針

モノ:裁縫用の針

対処法:開腹摘出

コメント:裁縫用の針を飲んでしまったと来院されました。レントゲン検査でハッキリと胃の中に針がある像が確認されます。内視鏡で摘出できないか試みましたが、内視鏡で引っ張る時にどこかに刺さる危険性があると判断したため開腹して切除しました。やはり猫は紐が好きなようで、糸がついていなければ猫は食べなかったと思います。何れにしても針を扱うときは猫が入ってこないようにしましょう。

7.糸

左上:ベロの上から見た図。糸は黄色矢印。左舌:ベロの裏側を見た図。ベロに糸が食い込んだ跡がある(水色)

モノ:タコ糸

対処方法:麻酔下で糸を切り摘出

コメント:口臭がきになるという理由で来院した猫です。口の中を精査すると舌の裏にタコ糸が引っかかっていました(黄色矢印)。おそらく引っかかってから時間が立っており舌に食い込み傷ができています(青丸)。実は猫はベロに紐が引っかかることは珍しくなく、異物の可能性があるときはまず最初にチェックする項目でもあります。

8.ゴム状のおもちゃ

モノ:バナナの形をしたゴム状のおもちゃ

対処方法:内視鏡摘出

コメント:ゴム状のおもちゃが胃と十二指腸の間に詰まっていました。ゴム製であったため、珍しくエコーが通過するため、黒く描出されました。胃内に止まっていたため、開腹せずに内視鏡で摘出することができました。

まとめ

こうして並べてみると猫はやはりひも状異物が多い傾向にありますね。異物を飲みこんでしまった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。時間が経っていなければ嘔吐させて出すこともできます。また異物のモノと場所によりますが内視鏡(詳しくはこちら)がある病院では、開腹せずに対処できることもあります。そのほかこれまで経験したのは、靴下の一部、スポンジ、ヘアゴム、毛玉、ピアス、釣り針などが詰まっていたことがあります。何が猫の好奇心を刺激するかわからないので、小物を出しっぱなしにしないように気をつけましょう。

“猫の異物誤飲の記録 〜どんなものを飲み込んでしまうのか〜” への3件のコメント

  1. とても参考になるブログをありがとうございます。わが家も誤食ですでに開腹手術を4回行い、同じく4回ぐらい強制的に吐かせた子がおります。誤食症とでも言うのでしょうか(本によって表現が違う)
    それでもないとは言われてのですが気をつけて外出時・就寝時は隔離状態です。ただ、隔離状態もエリアは広くてもストレスがたまるので自宅にいて目の届く範囲では自由にさせ、掃除などで目の届かないことがある時は口輪で対応していました(嫌がって口輪を準備すると隔離部屋に行くようになりました)。開腹手術も回数を重ねると縫い傷部分の皮が厚くなり腸が細くなってしまい、それがもとで腸閉塞や便秘を引き起こす可能性があると教わりました。隔離部屋は布関係は一切おけなくなりつつあり(常に様子をみながらかじりだしたらっ撤去)ベットも置いてやれないので温度管理も大変です。ただ、一つお願いがあります。この場で失礼ですが、応急で吐かせる方法を知りたいです。飲み込んでしまったのがわかった場合、時間や曜日によっては見てもらえる病院を探せない時があります。当方が田舎なこともありなかなかありません。タイムリミットが約2時間と聞いておりますが実際は胃にとどまる時間を含めもう少し長いかということも言われます。がしかし病院が開いていない近くにないとなるとやはり応急処置を知っておきたいのです。オキシドールを飲ませるとか塩を舐めさせるとかあるようですが意見が分かれるようですので、猫専門医からみてどおするのがベストかを教えてください。長文、失礼しました。

    1. 誤飲時の応急処置ということですが、申し訳ありませんがかなり危険性を伴うのでやはりおすすめできません。オキシドールは重篤な胃潰瘍を引き起こしますし、塩は最悪の場合命を落とします。最近では注射剤の静脈投与が安全性が高く、使用する獣医師が多いです。それでも猫は犬ほど反応が悪く、注射をしても吐かないことも多いです。すでに実施していただいていますが、やはり布を排除するという対策になると思います。布ばかり食べるということはウールサッキングだと思われます。

      1. ご返答いただきありがとうございます。やはり自宅での応急処置は危険ですよね。そのようなことにならないように今後も気をつけていきたいと思います。

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