ネコ科動物は地球で最も成功した肉食動物であり、現在残っている野生肉食動物の多くがネコ科です。ライオンからスナネコ、そして人と暮らすイエネコまで現在37種のネコ科動物がいます。一方、かつて北アメリカでは30種以上いたイヌ科動物は現在では9種まで減りました。
2015年に「イヌ類の減少はネコ類との競合の結果であった」と結論づけた研究が発表されました。この研究では4000万年前から現在までの2000個以上の化石を調べ、ネコ類がアジアから北アメリカに移動してきたことが、イヌ類の衰退の引き金になった事を明らかにしました。
イヌ類の絶滅は気候が原因ではなかった
この研究が注目されたのはイヌ類の「絶滅」と「気候」の関連が見出せなかった点です。かつての恐竜のように、種の絶滅と気候はいつの時代も大きく関連してきました。また現在では巨大な動物ほど絶滅しやすいと考えられていますが、当時のイヌ類の巨大化と絶滅の関連性もみられませんでした。
なぜネコ類が勝利を収めたのか
同じ捕食者であるイヌ類とネコ類の明暗を分けた要因は、シンプルにどちらが優れた捕食者であるかに尽きると考えられます。限られた獲物を奪い合うのは同じネコ科動物同士でも起こります。例えば、現在でもハイエナとライオンが獲物を奪い合っている映像を見た事があるでしょう。当時の北アメリカではネコ類の出現により、肉食動物の競争が激化しました。
ネコ類がイヌ類と比べて優れている点として、瞬発力、出し入れ可能な爪、発達した牙、などがあげられます。イヌ類もネコ類も元々は共通の祖先(ミアキスのような)から始まっていますが、アジアの森で独自の狩猟能力を磨いたネコ類はより優れたプレデター(捕食者)に進化していました。
最後に
肉食動物は一見、動物界を支配しているように見えますが、実際には常に激しい競争に晒されています。現在では多くのネコ科動物もレッドリスト(絶滅の恐れがある動物リスト)に載っています。当時の北アメリカで、イヌ類にとってはネコ類の出現は計り知れないインパクトだったのでしょう。今回の研究をもって、ネコがイヌよりも優れているという事ではありません。その後イヌはより早く人との共生に成功して、世界中に広がったように時代によって求められるものは変化するからです。
参考:The role of clade competition in the diversification on North American canids. PNAS. 2015