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猫の糖尿病のアウトライン

前回猫の腎臓病のアウトラインについて書きました。今回は治療に苦慮することが多い猫の糖尿病について解説します。

1.概要、2検査、3治療、4予後

1.概要

糖尿病とは血糖値が病的に高いことです。大切なエネルギー源である糖を体が吸収できなくなり、栄養状態の悪化、大量の排尿、神経障害、皮膚障害、免疫力低下、さらには重症例では意識障害、昏睡などの症状が現れます。ある報告では病院に来院する猫の100〜200匹に1匹は糖尿病になると報告されていますが、体感的にはもう少し頻度が高いように感じます。

中齢〜高齢で発症しやすく、糖尿病と診断される猫の50%以上が10歳以上です。他にはオス猫、肥満で発症率が高いです。特定の品種としてはバーミーズがオーストラリア、ニュージーランドの調査でリスクが高いことがわかっています。(日本のバーミーズでのリスクは不明)

治療により血糖値をコントロールできれば、健康な猫と遜色のない生活がおくれます。猫の糖尿病はインスリンが必要なくなる(寛解)こともある一方で、短期間で血糖値が大きく上下し治療に苦慮する猫ちゃんも少なくありません。

1.0 なぜ猫は糖尿病になりやすいのか

猫は犬に比較して糖尿病になりやすい傾向があります。明らかな原因はわかっていませんが、いくつかの仮説があります。

1 高炭水化物食が原因説:猫は完全肉食動物で(犬は雑食動物)、たんぱく質を主な栄養源にしています。しかし現代のキャットフードは穀物の割合が高く、炭水化物の取りすぎが糖尿病を引き起こしているのではないかという指摘です。(詳しくは 猫と炭水化物

2 飢餓に備えている説:野生の猫科動物は長期間獲物がとれないことがあります。ライオンやチーターも数日獲物が見つからないと耐えないといけません。長期の絶食時に血糖値が下がらないよう体が進化しました。これを「インスリン抵抗性」といいます。猫はインスリン抵抗性が高いため糖尿病になりやすいのかもしれません。インスリン抵抗性は自然界では必要な能力ですが、安定して食事をもらえるペットとして暮らしている場合はデメリットになっています。人間でもインスリン抵抗性が高いインディアンやエスキモーは現代食を食べていると他の地域の人よりも糖尿病発生率が高いことがわかっています。

1.1 用語解説

糖尿病には多くの専門用語がでてくるので本題に入る前に補足します。

インスリン:すい臓で作られるホルモンです。血中の糖をキャッチして、細胞に吸収させます。インスリンが足りないと血中の糖はエネルギーとして使えず、どんどん溜まっていき高血糖になります。血中に溜まった糖は腎臓から排出されるので糖尿になります。

インスリン感受性:各臓器の細胞にはインスリンレセプターといってインスリンを受け取る構造がありますが、レセプターに異常があるとインスリンを受け取りなくなります。この状態を「インスリン感受性の低下」と呼びます。感受性が低下する原因として、体質や他の病気(膵炎、末端肥大症など)または肥満などがあげられます。

1型糖尿病:糖尿病の分類の1つです。免疫細胞が自分の膵臓を攻撃してインスリンを作る細胞を破壊してしまい発病します。人間では若齢、10代で糖尿病になることが多く小児糖尿病とも呼ばれます。

2型糖尿病:糖尿病の分類の1つです。インスリン分泌機能の低下、インスリン感受性が低くなり発症する糖尿病です。人間でいわゆる「生活習慣が悪かったので糖尿病になった」と言う場合、2型糖尿病を示します。家族性の他、糖質のとりすぎ、運動不足などが原因です。猫の糖尿病は圧倒的に2型が多いです。

※糖尿病の分類方法の注意

上記の1型、2型という分け方は人間の医学から輸入した言葉で、糖尿病の原因によって分類しています。しかし人間と猫の糖尿病は発症するメカニズムが異なるため、猫にこの分類を当てはめると不都合が生じることがあり、そのため猫の糖尿病では「インスリン抵抗型」「インスリン不足型」「その他」の3つに分類した方が正確に病態を表しているという意見にシフトしています。ただし1型2型分類は広く知られているので、猫の糖尿病についてわかりやすく説明するために、この分類を使う獣医師も多いです。

低血糖発作:糖尿病の治療でインスリンを投与したとき、インスリンが効き過ぎると血糖値が正常値以下まで下がってしまいます。特に血糖値が50mg/dl 以下になるとふらつき、震え、さらに下がると意識消失やけいれんなどがみられ、低血糖発作と呼びます。

糖尿病性ケトアシドーシス:糖からエネルギーを作れない状態が続くと、脂肪からエネルギーを調達します。そのときに肝臓でケトン体が合成されます。ケトン体が大量に作られると、血液が酸性になります(アシドーシス)。

血液は酸とアルカリのバランスが凄く大事なため、そのバランスが崩れると吐き気や倦怠感が現れます。糖尿病が原因のアシドーシスを糖尿病性アシドーシスと呼びます。非常に危険な状態で、集中的な治療が必要になります。

寛解:病気の症状が見かけ上なくなった状態を寛解といいます。完治との違いは再発する恐れがある点です。がんや白血病、また精神疾患などの分野で使われることが多い言葉で、再発の危険性が高い病気は「完治」ではなく「寛解」を使います。

糖尿病の場合はインスリン等の治療が必要なくなることを寛解と呼びます。くだけて「インスリンから卒業することを目標に頑張りましょう」などと表現することもあります。猫の糖尿病は人間に比べて寛解しやすい傾向があります。

1.2症状

多飲多尿:各臓器で吸収されず行き場がなくなった血中の糖は腎臓から排出されます。このとき糖が大量の水分を抱えたまま尿になるので、水分も同時に失われます。その結果、喉が渇き飲水量が増えます。(飲水量の測り方はこちら

体重減少:糖が吸収されなくなるので、不足したエネルギーを補足すために体の脂肪を分解するため体重が減少します。「食べても痩せる」というのは糖尿病の典型的な症状で、食事量が変化していない、または増えたにも関わらず痩せてきた場合は糖尿病を疑います。肥満猫の場合、体重が減っても気がつきにくいので定期的に体重を計りましょう。短期間で10%以上(5kg→4.5kg)の減少した場合はなんらかの病気が疑われます。

元気消失、運動量減少、嘔吐:糖尿病が発症したまま時間が経過すると糖尿病性ケトアシドーシスに進行することがあります。これらの症状は他の病気でも起こる(非特異的症状)ため、糖尿病の特徴ではありませんが、嘔吐が主な症状で来院されて糖尿病が発覚することもあります。

2検査

糖尿病の検査は「血糖値が高い、尿糖が出た=糖尿病」というわけではないので注意が必要です。

・血糖値:猫の血糖値の基準範囲は74〜150mg/dl(IDEXX。検査機関によって異なる)です。猫の血糖値をみる時の注意点として、猫はストレスを感じやすい動物であるということです。ストレス性高血糖といって、猫が興奮していると正常な猫でも血糖値が一時的に高くなることがあります。ストレス性高血糖で血糖値が500mg/dl以上になることも報告されています。血糖値はすぐに結果がでる、微量の血液で測定できますが、食事やストレスに影響されやすいデメリットがあります。

・尿糖検査:猫では血糖値が約300mg/dlを超えると尿糖がでると考えられています。尿検査は自宅で行えるというメリットがあります。デメリットとしては検査結果は具体的な数字ではなく(−)や(++)といったおおよその結果として出るので、病気の進行や改善を評価しづらい点です。

 

・フルクトサミン:血液中の糖とたんぱく質が結合してできる物質で、血糖値と比例します。フルコトサミンは過去2週間の平均的な血糖値を反映するので、ストレスや食事などを影響を受けにくいというメリットがあります。以前は外部検査機関に依頼していましたが、院内ですぐに結果を測定することができるようになりました。

・糖化ヘモグロビン(HbA1c、グリコヘモグロビン):こちらは血液中のヘモグロビンと糖が結合したものです。フルクトサミンと同様、血糖値と比例しますが、こちらは過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映しています。より長期的な血糖コントロールを評価するのに適しています。

※糖化ヘモグロビンは検査機関で測定するので結果を得るのに数日かかります。

・その他全身検査:糖尿病以外で、血糖値が上がる病気の除外、インスリン感受性を低下させる病気(後述)の有無の確認のため、糖関連以外の検査も受けておいた方が良いでしょう。具体的には身体検査、他の血液検査、画像検査などです。

3治療

糖尿病の治療目標は体が糖を吸収するのを助け、症状を改善させ楽にさせてあげることです。インスリンの投与が治療の軸になりますが、中には食事療法とダイエットでインスリン投与が不要になる猫もいます。

3.0猫の糖尿病の治療が難しい理由

概要の項でも触れましたが、猫の糖尿病は血糖値のコントロールが難しいケースがあります。インスリンの量を少し変えただけで、低血糖になったり、全く効かなくなったりと…。なぜ猫の糖尿病は治療が難しいのでしょうか。

・自分で血糖値を計れない:猫に限らずですが、動物は自分で血糖値を測ることができません。人間では症状によりますが、安定期でも週3回は1日2回以上測るすることが一般的になっています。それに比較して動物は動物病院でしか計れず、回数が少ないことに加え通院ストレスが正確な評価を妨げています。

・インスリン感受性を下げる病気の存在:猫の糖尿病に2型糖尿病が多いのは、インスリン感受性を下げる病気が糖尿病を起こしていることがしばしばあるからです。初期の検査段階でこれらの病気を見逃していると、治療に苦慮します。

具体的には、副腎皮質機能亢進症、末端肥大症、プロジェステロン過剰症、膵炎、尿路感染症、口内炎、腎不全、肝不全、心不全、甲状腺機能亢進症、腫瘍などです。

・食事コントロールが難しい:人間の場合は食事を食べる前に狙ってインスリンを打ちますが、猫の場合はいつ食べるかわかりません。また、インスリンを打っているにもかかわらず食事を食べないと容易に低血糖になってしまうこともあり、インスリンの量を控えめにせざるえません。また糖尿病用の療法食を好まない猫も多く、治療の幹になる食事療法が実施できないのも、治療を難しくしていると感じます。

・低血糖発作時に対応:人間の場合は低血糖時にすぐに抛急できるようにシロップやジュースを携帯できます。猫の場合は飼い主さんがシロップを飲ませなくてはならず、もし飼い主さん不在時に低血糖発作が起こると非常に危険です。そのためいかに低血糖発作を起こさないかが極めて重要になります。

3.1目標血糖値の測定

治療を行う際に血糖値の目標を決めます。治療方針は各獣医師によって意見が異なりますが、私は大きく3つのグループに分けています。

①血糖値が正常範囲に近いレベル(150〜200mg/dl 以下):インテンシブプロトコールと呼ばれるものです(後述)

②尿中に糖がでないレベル(300mg/dl 以下)

③血糖値よりも臨床症状を優先する

もちろん1が最も理想的ですが、上記の理由より現実的には難しいことが多いです。③は食欲・体重の変化を見極めて、猫が元気に過ごしているのであれば、血糖値が高くてもインスリンの量を増やさずコントロールします。安定性を優先した治療といえるでしょう。

倦怠感のところに「?」がついているのは実際に400mg/dl台で血糖値を維持していてもすごく元気で食欲もあり、体重を維持できている猫がいる一方で、300mg/dl以下まで下げないとだるそうな猫がいもいます。一概に数字だけで猫の倦怠感は予想できないため付けました。

現実的には②と③が目標になることが多いです。血糖値だけでなくフルクトサミンや糖化ヘモグロビンを基準に目標を決める方法もあります。どのレベルでコントロールするかは飼い主さんの希望、飼い主さんが積極的に介護できるか、治療反応、猫の症状から総合的に決めます。

3.2インスリン製剤の種類

糖尿病治療の軸になるインスリン製剤。インスリンを補充してあげることで、糖の吸収を促します。現在動物医療で使われているインスリン製剤はランタス(グラグギン)、レベミル(デデミル)、PZIの3つがあります。インスリン製剤に優劣はなく、全ての糖尿病をカバーできるインスリン製剤はありません。

・プロジンク:長年猫の糖尿病治療に使われていた牛・豚由来のインスリンであったPZI Vetの代替品として開発されたヒト遺伝子組換えインスリンです。猫用のインスリンとして作られており、ランタスやレベミルよりも作用時間が短く1日2回の接種に適しているという意見もあります。2016年より国内でも入手可能になりました。

・ランタス:2003年に発売されたインスリンです。pHの変化によってゆっくり吸収されるように調整されています。そのため希釈して量を調節することはできません。プロジンクよりも寛解率が高いという報告があります。

・レベミル:体液中のアルブミンと結合しやすく単体のデテミル分子からゆっくり吸収されるように作られています。希釈可能です。ランタスの後に発売されましたが、両者の比較の研究では大きな違いは認められず、どちらの薬が優れいているということはありません。

各インスリンは効果が持続するための仕組みが違うので、個々の猫によって効き方が変わってきます。1つのインスリンで効果が安定しない場合はインスリンを変更することがあります。

※トレシーバ(デグルデル):2012年に人間で承認されたインスリンで、人間で42時間以上の作用時間があります。現時点で私が調べた限りでは猫への使用の報告はありませんでした。

インスリンの打ち方の動画

この動画はプリジンクというインスリンを使っています。注射器の種類など多少違いがりますが、他のインスリンでも参考になります

準備編

投与編

3.3血糖値曲線

血糖値曲線の1例

血糖値曲線とはインスリン投与後の血糖値の動きを把握するための検査で、インスリンの量を調整するのに欠かせない検査です。上の図のように1日4〜6回血糖値を測定する必要があり、入院するか朝一番でお預かりして作成します。

このグラフを見ながら、インスリンを調整しますが同じ量でも日によって結果が変わること、僅かに量を変えただけで血糖値が下がりすぎることがあり、調整には数日から数週間必要になることもあります。

3.4食事療法

食事もインスリンと並んで治療にとても大事です。基本は正常体型を維持すること。肥満はインスリン感受性を低下させますし、痩せすぎはインスリンの吸収が悪く、また作用時間が短くなります。また可能であれば3〜4回に分割して与えると食後の急激な血糖値上昇を抑えられます。

減量食型(ヒルズ w/d, ロイヤルカナン 満腹感サポートなど):食物繊維が多く含まれており、糖の急激な吸収を抑えます。もともと減量食なので体重のコントロールにも向いています。

高たんぱく質食(ヒルズ m/d, ロイヤルカナン 糖コントロール など):低炭水化物、高たんぱく質で血中への流入する糖の量を抑えてます。寛解(インスリン離脱)を目標にする場合も適しています。

3.4.1 猫が療法食を食べない場合

非常によくある問題です。どんなに素晴らしい療法食でも食べてくれなければ意味がありませんし、食事にむらがあると血糖コントロールを難しくします。ヒルズやロイヤルカナン以外に、アニモンダ、スペシフィックなど多くの会社が療法食を作っていますので愛猫に合った食事を探しましょう。それでもダメな場合は総合栄養食の中からたんぱく質の割合が高いものを選びましょう。

参考:猫に療法食を食べてもらうために9つのヒント

3.4.2 腎臓病、アレルギーなどを併発している場合

個々の猫の状態によりますが、基本的には併発疾患に対する処方食を選びます。アレルギーによる炎症もインスリン感受性に影響しコントロールを難しくするので、食物アレルギーがある猫ちゃんの場合はアレルギー除去食を勧めます。

また腎臓病の予後が2〜3年とすると(腎臓病について)、糖尿病で4〜5年治療を続けている猫も珍しくないので、先に腎臓の限界が来てしまいます。そのため腎臓をケアする療法食を優先します。

ただし猫によっては糖尿病食でないと血糖値が安定しない、変えたら体調が悪くなることもあるので、その場合は糖尿病食や好きな食事を与えた方が猫の生活の質は上がります。食事は血糖値に大きく影響するので変更する時は主治医に相談しましょう。

3.5その他の治療薬

・ スルフォニルウレア製剤(SU剤):膵臓のβ細胞に作用しインスリン分泌を促進します。しかし長期的に使用すると、β細胞周囲にアミロイドというたんぱく質が沈着し細胞死を起こします。つまり最終的にはインスリンがでなくなる状態(二次無効)になります。そのためあまり猫で使われることはありません。

・αグルコシダーゼ阻害薬:糖の分解を遅らせることで吸収を遅らせる薬です。単独では効果は殆どなく、他の食事療法やインスリンと組み合わせて使います。

3.6インスリン感受性を低下させる病気の治療の重要性

糖尿病の治療と同時にインスリン感受性を低下させる病気(基礎疾患)を治療する必要があります。これらの病気が隠れていると「インスリンが全然効かない」、「効き方が毎回違う」などのトラブルが起こります。

特に膵炎は糖尿病の猫の50%が持っているという報告もあるぐらい、糖尿病に影響を及ぼす病気です。また末端肥大症といって成長ホルモンが過剰にでる病気があると、インスリンを増やしても全く効かないことがあります。最近の報告では末端肥大症は今まで考えられていたよりも高い割合で罹っているという報告があります。

3.8自宅血糖値モニタリング

飼い主さんが自宅で猫の耳の細い血管から血糖値を測定する方法です。以下のメリットとデメリットがあります

 

 

ストレスが低い環境で測ることで、より正確な血糖値を把握することができます。また自宅で元気がない、ぐだっとしている時に血糖値が高すぎなのか、低すぎるのが原因なのかを判断できるのも大きなメリットだと思います。

デメリットとしてはまず猫が怒ったり、抑えられるのを嫌うと危険なので行えません。また愛猫に針を刺すという精神的な負担、また血糖値の数字を毎日見るのがストレスになることがあります。人間でも血糖値恐怖症といって、血糖値が高いと焦ってしまい医師の許可なくインスリンを増やして低血糖になったり、数字をみるストレスで体調を崩すことがあります。

・方法

①必要なもの:グルコース測定器と検査紙(蝶々が書いてある紙)、滅菌された針、コットン(19秒) ②検査紙を測定器に刺します(31秒) ③ライトで照らすと耳の辺縁(外側)にある静脈を確認できます(50秒)④これが辺縁静脈の血管です (1分.03秒)⑤ 簡単に血管が確認できる猫とそうじゃない猫がいます(1分.14秒)⑥コットンを耳の裏側に添え、優しく血管をちくりと刺します(1分.24秒)※貫通させる必要はありません ⑦試験紙を血液の滴の上に触れさせます (1分.34秒) ⑧コットンで刺した部位を押さえます (1分.44秒)⑨6.1です、良好です。(イギリスは単位が違います  6.1mmol/L = 109.8mg/dl)(1分.51秒)⑩コットンで出血が止まるまで圧迫します(1分.59秒)11. 数秒で出血は止まります (2分.06秒)

血糖測定器

以前は人用を流用していましたが、現在では動物用が入手可能です。猫モードに合わせて測定しましょう。

アルファトラック2:ゾエティスジャパン
シンカ BS-711:アークレイ。血液中の赤血球の量による誤差を補正する機能を搭載し、測定精度を高めたモデル

 

3.7 インテンシブコントロール

またはタイトプロトコールと呼ばれる治療方法です(※プロトコールとは治療計画という意味)。先述の目的血糖値の①150〜200mg/dl 以下を目標にコントロールする、強めの治療方法です。血糖値の結果によって、インスリンの量を変更していき、常に正常血糖値に近ずけることでインスリン分泌機能、インスリン感受性の回復を待ちます。最大のメリットは寛解率が高いことです(64%  Roomp K and Rand J 2009)。

一方低血糖発作のリスクから自宅血糖測定は必須で1日3回以上測定できる方しかインテンシブプロトコールは行ってはいけません。かならず獣医師の指示のもと利点、危険性を理解した上で行わなければいけません。

4 予後

予後とは今後の病状についての見通しで、進行具合や生存率を示します。糖尿病の予後は血糖値がコントロールできていれば良好というのは人間と同じです。

人間の糖尿病患者において重要な合併症ですが、猫はもともと慢性腎臓病が多い為、糖尿病がどのくらい影響を与えるかわかっていません。治療期間が長ければ長いほど影響があると予想できますが、寿命の関係、(人間の1/5)、から治療期間が短いので大きな問題になっていないのでしょう。

猫の糖尿病は高齢で発症するのが殆どで、仮に10歳で糖尿病になったとしても猫の平均寿命は15歳前後なので血糖コントロールがうまくいけば寿命を全うできることが多いです。また猫は糖尿病性白内障になることも殆どありません。

寛解しやすいというのも猫の糖尿病の特徴です。これは基礎疾患(インスリン感受性を低下させる疾患)が改善すれば糖尿病から離脱できることが関係しているでしょう。寛解後も療法食は続けましょう。

まとめ

糖尿病という病気の性質上、個々の猫に合った治療が求められます。そしてどのインスリンがいいのか、どの療法食がいいのかも猫により様々です。選択肢が多いゆえ、飼い主さんからすると獣医師の治療方針に疑いが生まれやすいのではないかと感じます。ネットの情報も書く人間によって偏りがあります(もちろん私も)。疑問点はその都度担当獣医師に確認しながら、なぜこの治療法を選んだのか納得しながら進むことが大切でしょう。糖尿病に関してはまだまだ書くべきことが沢山あると感じます。今後アップデートしていこうと思います。

参考文献

The Cat: Clinical Medicine and Management

Feline Diabetes Mellitus. Clinical use of long-acting glargine and detemir. JFMS (2014)

Intensive blood glucose control is safe and effective in diabetic cats using home monitoring and treatment with glargine JFMS (2009)