いまから10年以上前の2001年12月22日、世界で初めてのクローン猫「CC」は生まれました。CCという名はCopy Cat 、またはCarbon Catの頭文字を取って付けられました。CCは初めてクローン技術から生まれたペットとして、当時のペット業界に大きなインパクトを与えました。
当時の人たちはクローン技術で、亡くなったペットにまた会えるかもしれないという夢をもっていました。もちろんクローンはオリジナルのペットと同じ遺伝子を持っていますが、違う個体です。
しかし最愛のペットを亡くしたことがある方は「もしももう一度会えたら」と思う気持ちは容易く理解できるでしょう。そんな希望の中CCは誕生しました。
CCは健康に成長しました。CCはレインボーという名の三毛猫のクローンでした。しかしCCとレインボーは外見が全く似ていませんでした。CCはキジシロ、レインボーは三毛猫でした。
幼猫時のCCの写真はこちら。図aがレインボー、そして図bの仔猫がCC、サビ猫は代理出産したアリーという猫です。
その後CCは共同開発者のDr. クリーマーの家で、普通の猫と同じように可愛がられて暮らしています。2006年には出産を経験、2匹の雄猫と1匹の雌猫を育てました。これもクローンペットにとって初めての出産になります。多くのクローン動物は短命であったり繁殖能力がなかったりしますが、CCは完璧な健康体です。クリーマー夫妻はCCについて「CCがクローン技術で生まれたことに気づく人は誰もいません、いたって普通の可愛いらしい猫です」と話しています。
CCは2011年に10歳になったとAFP通信から報告されています。その後の報道はありませんが、おそらく2014年現在も元気にしていると思われます。
CCはなぜレインボーと違う毛色なのか??
CCとレインボーの全ての遺伝子は完全に一致しています。従来の遺伝学では遺伝子が同じであれば同じ姿の生き物が生まれてくるはずでした。しかし現実にはそうではなかったのです。これは「エピジェネティクス Epigenetics」が関係していると考えられます。
エピジェネティクスとは「エピ=外側、以外」と「ジェネティクス=遺伝学、遺伝子」という意味の単語がくっついてできた言葉です。つまり「遺伝子以外に遺伝に影響するもの」があることが分かり、それをエピジネティクスといいます。
簡単に説明すると動物の体を「家」とすると、遺伝子は「設計図」です。いままでの遺伝学では設計図が同じであれば同じ家ができると思っていました、しかし実際はそうはいきません。設計図には様々なアイデアwが書いてあり、その中からどのアイデアを使うかは大工さんが決めます。さらに大工さんのアドリブが入ったり、建築中に台風が来るかもしれません。そういった大工さんの選択や、環境の変化をエピジェネティクスといいます。
※エピジェネティクスについてもう少し知りたい方はこちらのサイトがわかりやすいです
三毛猫の設計図をキジシロにするなんてありえない、と思われるかもしれませんが、猫の毛色遺伝子は非常に複雑で、少しの違いで大きく柄がかわってしまうのです。三毛猫でも全く同じ柄の三毛猫のがいないのはエピジェネティクスの影響だと考えられています。
CCの後に今度は飼い主さんの要望でニッキーという名のメインクーンのクローン、リトルニッキーが生まれました。飼い主さんはリトルニッキーのために5万$を支払いました。リトルニッキーは健康でしたが長生きできませんでした。
リトルニッキー以降クローン猫を作ってほしいという依頼はなく、2006年にクローンビジネスを展開していた会社も潰れました。
もし今後より精度の高いクローンが出来るようになったとしても、それはやはりもとの猫のそっくりさんであって、別の生き物です。クローンといえど記憶は復元できません。多くの人が自分のペットが一番と思うのは唯一無二の存在であり、同じ時間を過ごしてきたからではないでしょうか。