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サイベリアンは猫アレルギーが出にくいって本当!?

先日のNY研修の往診の際、サイベリアンを飼っているお宅に訪問したときドクターが少年にアレルギーの調子はどうだい?と聞いていました。この家庭では元々夫婦が猫好きでしたが子供が猫アレルギーのため一度猫を飼うのを諦めていたそうです。サイベリアンならば猫アレルギーが出にくいという助言の元、実際に飼ってみたところ少年は猫アレルギーの症状は表れず、サイベリアンと仲良く暮らしているとのことでした。

サイベリアンというのはロシア生まれの純血種の猫です。プーチン大統領が秋田県知事に贈られたサイベリアンのミール君が一時日本でも有名になりました。サイベリアンはロシアの寒い気候に耐えるため大きな体と、重厚な被毛が特徴的な猫です。

猫アレルギーの原因「Fel d1」

猫アレルギーを起こす原因は猫の唾液や皮脂腺から分泌される「Fel d 1」というタンパク質であることがわかりました。他にも「Fel d 2」、「Fel d 3」「Fel d 4」「cat IgA」というタンパク質もあり、特に「Fel d 1」「Fel d 4」が猫アレルギーにおいて重要な役割を果たしています。

Fel d 1の結晶構造

サイベリアンはFel d 1が低い?

2000年に2匹のミックス猫、アビシニアン、そしてサイベリアンのFel d 1を測定したデータが発表されました。その結果が下記の図です。

INDOOR Biotechnologies http://www.webcitation.org/query?url=http%3A%2F%2Fwww.siestadream.com%2Faler.htm&date=2008-11-30

この発表をきっかけにサイベリアンは猫アレルギーが少ないのではないかと議論されるようになりました。

しかしデータが少ないですね。サイベリアン1匹しか測定していませんしアビシニアンもミックス猫に比べると遥かに低い値です。 このデータを発表したINDOOR BIotechnologies 社にもあまりに多くの質問がまいこんだため、同社もこの結果だけではサイベリアンが低アレルギー猫であるとはいえないとHPで説明しています。

その後2009年にSiberian research 社という非営利団体が数百頭のサイベリアンのオーナーに協力によりサイベリアンの唾液中のFel d 1濃度を測定しました。その結果50%のサイベリアンはミックス猫よりもFel d 1濃度が低いことがわかりました。しかし残りの50%はミックス猫と同程度、中にはミックス猫の平均よりも高い数値がでたサイベリアンもいました。つまりサイベリアンのFel d 1濃度は平均的には低めであるが個体差があるということです。

その後、様々な猫でFel d 1が測定され

•メス猫の方がオス猫より低い

•未去勢オスの方が去勢オスよりも低い

•薄い毛色の方が濃い毛色より猫アレルギーの症状が出にくい

•サイベリアンの他にオリエンタルショートヘア、バリニーズ、デボンレックス、コーニッシュレックス、スフィンクス等も低い傾向にある

などなど様々なデータがでており、反って飼い主さんを混乱させる要因になっているのでないでしょうか。どのデータでもいえることはFel d 1を全く分泌しない猫はないことです。

まとめ

サイベリアンはFel d 1の平均値が低いためアレルギー症状がでにくいといえます。個体によっては普通の猫と変わらない量のFel d 1を分泌するので、全てのサイベリアンがアレルギー症状が出にくいということではないので注意しましょう。

またこのデータはアメリカのサイベリアンのデータなので、日本に来ている血統では違う結果がでる可能性もあります。

冒頭の例のようにサイベリアンを飼ってアレルギー症状が軽減されたのは、その個体のアレルゲン(今回の話ではFel 1 d) が少なかったからでしょう。同様に自分の家の猫ならばアレルギーがでない猫アレルギーの方は、飼っている猫のアレルゲンが低いのかもしれません。

友人でも実は猫アレルギーをもっている獣医師は多いです。そういった友人の話を聞くとやはり特定の猫で症状が強く出るようです。