血液型というと輸血よりも性格診断の話題に上がることが多いですね。日本ではだいたいA型が40%、0型が30%、B型が20%、AB型が10%になります。このように良い感じのバランスでバラけているため、日本では血液型占いが盛り上がるといわれています。
猫にも血液型はあるの?と聞かれますが、もちろんあります。猫の世界ではA型が多く、ついでB型、AB型は極めて希、そしてO型はありません。割合は人間同様地域と猫種によって異なりますがA型が平均すると80%を占め、20%前後がB型で、AB型は数%以下です。日本の猫の血液型を調べた研究は30年以上前に1つだけあり、90%以上がA型でした。
もちろん血液型が異なる猫に輸血をするのは危険で、特にB型の猫にA型の血液をすると強い輸血反応が起こります。
B型の割合が高い猫種
15~30% がB型 | アビシニアン、ソマリ、ペルシャ、ヒマラヤン、スコティッシュフォールド、バーマン、スフィンクス |
30%以上がB型 | ブリティッシュショートヘア、エキゾッチックショートヘア、デボンレックス、コーニッシュレックス 、 |
上記の猫は特にB型が多いため注意が必要である猫種です。輸血の時だけでなく、ブリーディングをする時も血液型が異なると新生猫が亡くなってしまうことがあります(新生子溶血:詳しくは下記)。
B型がほぼいない猫種
B型はほぼ0% | シャム、ロシアンブルー、オシキャット、オリエンタルショートヘア |
血液型の調べ方
猫の血液型は動物病院で調べられます。検査機関に依頼すると数日かかります。その場ですぐに診断できる簡易血液検査キットもあります。
猫と人の血液型のシステムの違い
A、B、AB型と人と同じ呼び方をしていますが、血液型が決まる行程は全く異なります。血液型は両親から1つずつもらった血液型遺伝子の組み合わせで決まります(メンデルの法則)が、人の場合はO型遺伝子が劣勢で、A型、B型遺伝子は同じ強さです。不等号で表すと、A=B> O。つまり組み合わせによって下のようになります。
遺伝子型 ヒト | 血液型 ヒト |
A/A | A型 |
B/B | B型 |
O/O | O型 |
A/B | AB型 |
A/O | A型 |
B/O | B型 |
一方猫のAB型遺伝子はA、B型遺伝子と全く関係ありません。まぎわらしい事にAとBだからABではなく、独立したAB型遺伝子が存在します(第三の対立遺伝子)。そして遺伝子の強さはA>AB>Bとなっています。AB型はB型よりも強いですが、絶対数が少ないのでほとんど見かけることはありません。つまり遺伝子型の組み合わせにより、血液型はこのような結果になります。
遺伝子型 ネコ | 血液型 ネコ |
A/A | A型 |
B/B | B型 |
AB/AB | AB型 |
A/B | A型 |
A/AB | A型 |
B/AB | AB型 |
例外は常にある
ほとんどの人や猫は遺伝子型により血液型が決まります。しかし中にはこの法則では生まれるはずがない血液型の子供が生まれてしまうこともあります。例えば人でAB型とO型の夫婦でもO型の子供が生まれることがあり、これは遺伝子変異によるものだと考えられています。猫でも血液型に関与する遺伝子変異が報告されています。またAB型についてはAB遺伝子と関係なく発生することもあり、まだ完全には明らかになっていません。
血液型は調べておいた方がいい?
1緊急時にそなえて
緊急時に備えて調べておいた方が輸血はスムーズです。しかし仮に血液型がわかっていても輸血を受ける前には交差適合試験が必要です、交差適合試験は1時間ほどで結果がでます。血液型、交差適合試験両方をクリアした猫からの輸血が望ましいです。
※交差適合試験(クロスマッチ試験):輸血を受ける猫(受血猫)と血液を提供する猫(供血猫)の間の相性を調べる検査です。同じ血液型同士でも交差適合試験が合わなければ輸血は行いません。
2子供を産む場合
B型が多い猫種の繁殖を考えている方は必ず血液型を調べてからのブリーディングを行いましょう。B型の母猫の初乳をA型の仔猫が飲むと赤血球が壊れて亡くなってしまうことがあり、これを新生猫溶血現象といいます。B型の猫はA型の赤血球に対して強い抗体を持っているためです。この現象は血液交換を行う血液胎盤関門でも起こり、死産や母猫の赤血球が溶けてしまう危険性もあります。
猫の輸血の実際
猫には血液バンクがありません。そのため輸血をするときはオーナーさんの同居猫や病院の猫から輸血しているのが実際です。アメリカには動物の血液バンク(例:BRVBB)がありますが、犬と比べて体が小さ猫は血液が不足しています。輸血する側の猫にも条件があります。大柄で若く元気であること、そして感染症がなく健康診断をパスする必要があります。
最後に
血液型を調べておくメリットとしては無駄な交差適合試験を避けたり、交差適合試験の結果が待てないほどの緊急時に役に立つことなどがあります。検査に必要な血液は少量なので、避妊去勢の術前検査時の採血で調べることもできます。ブリーディングのための血液型検査は、ブリティッシュショートヘアなどの人気猫種もB型が多いので強くお勧めします。
また猫の血液型によって性格が変わるか?と聞かれることがありますが、あまり実感しません。ほとんどがA型なので関連性は低いと思います。私はAB型ですが、いまだにAB型の猫には会ったことがありません。
参考資料
・Feline Red Blood Cell Groups Detected by Naturally occurring Isoantibody. 1986 JJVS
・UC Davis Veterinary Genetic Laboratory AB Blood Group in Felines