猫はあまり水分をとりません。それは猫が砂漠からやってきた動物というのも関係しているかもしれません(猫の祖先についてはこちら)。
猫の病気のサインの1つに「飲水量の増加」があります。たくさん水を飲んでたくさん尿をすることを獣医学では多飲多尿と呼びます。
多飲多尿が起こる病気として慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症などがあります。どれも猫にとってメジャーな病気です。動物病院でこれらの病気が疑われると獣医師から「尿量が増えていませんか?」と聞かれるでしょう。
しかし尿量の変化はわかりにくいです。急激に増えればすぐにわかりますが、慢性腎臓病などは数ヶ月の間に少しずつ増えるので毎日トイレ掃除をしている飼い主さんは気付きにくいです。そして猫砂に吸収された尿量を測る事は出来ません。
尿量が増えている猫は、水分を補うために沢山水を飲みます。猫は殆ど汗をかかないため、飲水量からおおまかな尿量を推定することができるので、飲水量を測りましょう。
測定のやり方
測定のやり方といっても特別な事はしません。注意する点は、通常水は半日ほどだしたままだと思いますので自然に蒸発する水分を計算に入れる事です。蒸発する量は微量ですが、猫の飲水量は元々少ないのでしっかり計算に入れましょう。
①いつも使っている水飲み皿に200〜300mlほど水を入れます。
②同じ容器に同じ量の水を入れ、隣に置きます。猫が飲めないように網で蓋をします。これは蒸発した水分を測定する用です。
③12時間後に最初に入れた量から気化した量、残っていた量を引きます。
例)300mlの水が200mlになっていた。網をした方の容器は280mlになっていた。
300mlー20ml(気化分)-200m=80ml
これが半日の飲水量です。
④これをもう一度繰り返します。猫によっては夜間に飲水量が多い事もあるので必ず2回行い、1日の飲水量を測定して下さい。
正常な猫の1日の飲水量
1日体重1kg あたり 50ml 以下です(Small animal internal medicine 5th より)。これを超えると多飲といえます。
例)体重 5kgの場合 5kg × 50ml = 250ml 以下
ウェットフードを食べている場合
ウェットフードを食べている場合は、フードに含まれる水分量を引かなくてはいけません。
例) 体重4kgの猫が1日当たりロイヤルカナンの退院サポート175gを食べている。どのくらい水を飲んでいたら多飲といえるか。退院サポートは1g=1ml、水分比率は75%とする。
A)
この猫の多飲の基準値
4kg × 50ml = 200ml 以上なら多飲
退院サポート中の水分量 175g × 0.75(75%) = 131.25 ml
よって 200ml − 131.25ml = 68.75 ml 以上飲んでいれば多飲といえる。
ちょっと計算が面倒ですね。ウェットフードの水分比率によって変わってきますが簡易的には 体重 × 10〜20 ml 以上 飲んでいると多飲といえます。
水飲み場が複数の場合
これは面倒ですが、各水飲み場の減少量を測るしかありません。気化分を測るようの網掛け皿は1カ所に設置すれば十分でしょう。
多頭飼いの場合
測定するためには1日別行動にしましょう。ケージなどに入れると異変を感じて飲水量が減る可能性があるので、どこか1室フリーに動ける場所で測定して下さい。
まとめ
飲水量の測定は自宅で測定可能かつ費用はかからない上に、猫に多い様々な病気を診断するきっかけになります。健康診断はちょっと連れて行くのが大変、費用が気になる……という方でも簡単に行えます。特に上記の病気は高齢の猫で多いので10歳以上の猫ちゃんが家にいる方は一度測定してみましょう。
※注意:飲水量が正常だからといって上記の病気を除外できるわけではありません。初期の場合は多飲を示す疾患でも、飲水量が正常な場合もあります。