9月の後半からダラスで行われたAAFP (American Association of Feline Practitioners)というアメリカの猫学会に参加してきました。
AAFPはアメリカの獣医師が中心になって開いている学会で、全ての講演が猫に関係した猫に特化した学会です。アメリカ人だけでなく、カナダやスイス等からの参加者もいました。今年、日本人の参加者は私だけでした。
今回のテーマは「歯科」「栄養学」「痛みの管理」でした。これらのテーマを1日ずつ3日に渡って開催されました。
「歯科」では猫に多い口内炎についての話が中心でした。口内炎の治療方法の1つに抜歯処置があります。抜歯処置は痛みも大きく麻酔が必要です。また抜歯をしたからといって症状が改善するとは限りません。今回は抜歯をした後の具体的な予後のデータ、抜歯をしない場合の治療などについて話が聞けました。
「栄養学」では猫と炭水化物について。猫は本来完全肉食動物、エネルギーの大半を蛋白質と脂肪から摂取していました。たとえば野生猫科の獲物のねずみなどの炭水化物は全体の1~2%しか含まれていません。しかし現在のキャットフードには40%前後の炭水化物が含まれています。これが肥満や糖尿病の発症要因になっているのでは?ということについて議論されました。しかし現在のところ炭水化物が高いキャットフードが直接肥満の原因にあるデータはないようです。それよりも避妊去勢、活動性の低下、いつでもご飯が食べれる環境などが肥満に影響しています。最近ダイエットについて勉強した私にとってタイムリーなテーマでした。
「痛みの管理」では末期がんの猫の痛みをどうケアするかなど、具体的な議論が行われました。がんの猫のターミナルケアはがんの種類や猫の性格に合った様々な治療が求められます。病院嫌いの猫であれば在宅治療を選択し、飼い主さんと一緒に過ごして欲しいです。アメリカでは日本より安楽死に対する抵抗が少なく比較的安楽死を選ぶオーナーさんが多いと聞いていました。そのため私はアメリカの獣医療はターミナルケアにはあまり重きを置いてないのかと思っていました。しかし今回の学会での講演を聞いていると、アメリカの獣医師はできるだけオーナーさんが安楽死を選択して欲しくない、猫に最後まで苦しまないで欲しいという気持ちが十分に伝わってきました。アメリカの獣医師がどういった治療をターミナルケアで行っているか、非常に参考になりました。
ここに出た以外にも多くの話が聞けました、今回学んだことを病院に持ち帰り、日々の診療に生かしていきます。