このブログでも過去に猫の食物アレルギーについてまとめています。これを書いたのが8年前ですので、食物アレルギー用の食事も新しいのが出ていたりと、結構変わりました。一方で診断方法に関しては大きな変化はなく、除外診断(他の病気を外していく)と試験的な治療(療法食を試す)の2つがゴールドスタンダートのままです。ヒト医療で一般的なIgE抗体検査やパッチテストは依然として、診断価値が高いとはいえない状況が続いています。
試験的な治療において、大事なのが今回のテーマの「再現性試験」です。別名で「負荷試験」ともいいます。これは食事の効果確認をより強固にするための方法で、食物アレルギーの確定診断に必要です。これをやらないと”食事が効いているか、いないのかわからないけどなんとなく続けいている”というような状態が続いてしまいます。
食物アレルギーは皮膚の痒みがでる皮膚炎や、嘔吐や下痢が出る腸炎タイプがありますが、どちらも再現性試験が重要なことに変わりはありません。
・再現性試験は何のため?
皮膚炎、腸炎ともに食事だけでなく、環境やストレスにも影響を受けます。特に腸炎は子猫が成長するにつれて自然に収束していくことも珍しくありません。そのため実際には食事の変更が、状態改善と関係していないこともあります。もしそうであった場合、必要のない療法食をずっと与えることは経済的にも、猫の満足度的(美味しいものを食べたい)にも好ましくありません。
・やり方
STEP1:症状やプロフィール、検査結果から食物アレルギーを疑う場合、食物アレルギー用の療法食をスタートします。療法食には原材料が絞られた単一蛋白食(主成分が豚と芋だけ、など)と加水分解食(特殊な工程によりタンパク質を分解した食事)の2つがあります。具体的な食事の種類はこちらでまとめています。
STEP2:療法食を8週間続けます。これが結構大変ですが、最低でも4週間は続けましょう。食物アレルギーというと、急激に発症するそばアレルギーなどの即時型のイメージが強いかもしれません。ですが、猫の食物アレルギーは遅発型がほとんどで、食事変更の効果が出るまで時間がかかります。
この段階で改善がみられたらSTEP3へ進みますが、改善がない場合はSTEP1に戻ります。STEP1に戻った場合は2つ目の療法食を試します。何種類までは試すかは飼い主さんと相談して決めますが、2〜3種類試しても効果がない場合は、食物アレルギーの可能性は低いと考えます。
STEP3:このステップが最も重要で、今回のブログのテーマになります。症状が改善したのちに、以前の食事に戻します。その結果、症状が再現されるかを確認しましょう。
STEP4:再発した場合のみ、食物アレルギーと診断されます。一方で食事を戻しても症状が収まったままの場合、食物アレルギーではない可能性が高まります。
・まとめ
再現性試験は理論としてはそれほど難しくありません。ですがせっかく症状が収まったのに、あえて再発させることに抵抗があるお気持ちはすごくよくわかります。
一方で再現性試験をしないことで不要な療法食を食べ続けている猫がたくさんいると、日々の診療で感じています。正しい診断をすることで、経済的にも猫の食事の楽しみ的にもメリットがあります。ちょっと手間ですが、ぜひ最後のSTEP4まで到達できるまで頑張りましょう。