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猫草とはなにか 〜猫草食べないけど大丈夫?〜

ネコ草。その語感の良さから猫好きには広く認知されている言葉ですが、実際にはどんな植物なのでしょうか。また猫はネコ草を食べるものだと思われており、ネコ草を食べないことを心配する声も多いです。

ネコ草とは?

猫が好んで食べる草。つまり1種類の植物がネコ草というわけでなく、いくつかの植物の総称です。一般的に認知されているネコ草は緑のトゲトゲした草でしょう。

無印良品のネコ草

 

これは燕麦(エンバク)、別名カラスムギの若葉です。ペットショップやホームセンターで「ネコ草」と表記して販売されています。燕麦はイネ科の穀物で、シリアルコーンやビール、ウィスキーの原料に使われます。他には小麦や大麦の若葉をネコ草として売られていることもあります。共通しているのは猫はイネ科の背の低い草を好むということです。

なんで食べるの?

猫がネコ草を好んで食べる理由は解明されていませんが、いくつかの仮説がありますので解説します。

仮説1.毛玉を吐くため:ネコ草を摂取することで、胃をチクチクと刺激し嘔吐を誘発させている。猫は毛づくろい時に、多かれ少なかれ自分の毛を飲み込んでいます。胃の中で毛球ができて腸に詰まってしまうことを予防しているのではないか。

仮説2.便秘予防:猫は比較的便秘になりやすい動物です。それ肉食であることと関係しているでしょう。ネコ草の食物繊維を摂取することでお通じを良くしているのではないでしょうか。毛づくろいで飲み込んだ毛の排泄を良くするという目的もここに含まれます。

仮説3.食感を楽しむ:ネコ草は猫にとって嗜好品の1つではないかという説です。ネコ草を食べている姿をみると、通常食べ物を丸呑みしがちな猫の割にはくちゃくちゃとなんども噛んでいることがわかります。

仮説4.ビタミン補充:ネコ草には葉酸などのビタミンが多く含まれています。葉酸はビタミンの一種で、ビタミンMやビタミンB9とも呼ばれます。赤血球を作るのに必要なビタミンです。

仮説4に関しては、キャットフードを食べている猫で葉酸欠乏を起こしている猫は非常に稀なことから信憑性は低いと考えられます。

仮説1については確かに尖っていますが、それにより嘔吐が促されるほどの刺激があるのか疑問が残ります。野生の猫は獲物を丸呑みしますので、骨や毛、鳥の羽など、消化できない部分も食べてしまいます。

そういったものを吐こうとした時、うまく吐けず、なにか胃に入れて吐こうとした時に身近にある草を食べているのかもしれません。猫は食べられない植物が多いですが(詳しくはこちら)、イネ科は比較的安全に食べることができます。実際ライオンやトラなども雑草を食べて吐く行動は見られるようです。

同様に仮説2のお腹が張った時に草を食べると、張りが解消されることを本能的に知っているのかもしれません。

仮説3に関しては猫に聞いてみないとわかりません。しかしネコ草を食べなくても健康的に問題が起こらないので、嗜好品という仮説が浮上してくるのも納得できます。

ネコ草を食べないのですが大丈夫ですか?

大丈夫です。猫によってはネコ草に全く興味を持たない猫も少なくないです。毛球を吐く回数が多いのが気になる場合は、他の病気の可能性もありますので一度動物病院に相談してください。

食物繊維を多く含んだ食事やサプリメントで溜まった毛の便からの排泄を助けることができます。またブラッシングをこまめにすることで飲み込む毛の量を減らすことができます。

実際に毛球は腸に詰まるのか?

毛球が腸に詰まって手術まで行くケースは非常に稀です。ある消化管内異物のデータを発表した論文で、摘出した異物はほとんどがゴムや糸で、毛球はありませんでした。詳しくは次回毛球症についてまとめます。

 ネコ草ばっかり食べているのですが大丈夫ですか?

反対にネコ草が大好きな猫もいます。ネコ草はほとんど体に吸収されないので食べ過ぎても栄養バランスが崩れることはないでしょう。あまりに食べて過ぎて吐いてしまうほどであれば、量を調整してください。経験的に、上の写真の無印良品のネコ草であれば月2個くらいで十分といえるでしょう。

うまいにゃ

 

ネコ草は猫に食べられても育てればまた生えてきます。

まとめ

・ネコ草は猫が好んで食べる草の総称。燕麦や小麦など細長いイネ科を好む。

・ネコ草を食べる理由は明らかになっていない。毛玉のコントロールのためという説が有力。

・ネコ草を食べない猫も多い。食べ過ぎる場合は量を調節してあげる。

ネコ草は猫に必須なものではないので、猫に与えるべきか否かは意見がわかれるところです(特に毛球が問題になっていない猫の場合)。猫が草を食べることは正常な行動の1つなので、私は特に問題がなければ与えて良いと思います。

猫にとって豊かな環境の1つとして、自然との接点を持たせるという項があります。外の空気を吸わせたり、虫を追いかけるたりということですが、実際には脱走の危険性や都心部の住宅地では十分なスペースがなく危険です。非常に限られた自然ですが、家の中でも楽しめるので猫にとっても良い刺激になるでしょう。ネコ草が好きな猫にとってはなおさらでしょう。