8月最後の週にニューヨーク市マンハッタンにある猫専門病院 マンハッタンキャットスペシャリスト( Manhattan Cat Specialist 略してMCS)に研修に行ってきました。写真はMCSの外観です。ビルの工事中で機材が置いてありました。
今回研修させてもらったMCSの院長 Dr.plotnick はメリーランド州の猫専門病院で勤務したのち、猫専門医の資格を取得し、マンハッタンで猫専門病院を開院しました。
まず Dr.Plotnick の診察から感じた事は時間をかけることでした。問診と身体検査に30分以上かけて丁寧に行っていました。Dr.plotnickは「基本的な身体検査を疎かにしなければ、身体検査で半分以上の病気を見つけることができる」と言います。
問診の間は猫は診察室を自由に歩いていました。これは猫を病院に慣らせるためです。VT(Veterinary Technician 動物看護師)も猫の扱いに長けており、採血等で猫を抑えるときにエリザベスカラー(猫の首に巻く、猫が噛みついてきたときに防ぐことができる)を殆ど使っていませんでした。
年代が近いもう1人の獣医師 Dr.sheheri も猫に対する情熱があり凄く刺激になりました。2人の猫専門獣医師と糖尿病、甲状腺機能亢進症、リンパ腫など猫に多い病気について意見交換する事ができました。Dr.Plotnick と Dr.Sherheri ともそれぞれの治療指針をもっており自信を持って仕事をしていることが伝わってきました。
また猫の病院ならではのテクニックや気遣いをVTの方から沢山教えてもらいました。例えば手術後は猫砂が手術の傷口にくっついてしまうため、術後の数日は体にくっつきにくい特殊な猫砂を使っていました。簡単なことですが、猫の入院時の不快感を減らす事が出来ます。このテクニックは当院では行っていなかったので、さっそく今後の術後管理で実践していこうと思います。
今回研修に行ってアメリカの獣医療に対する印象が変わりました。日本では「アメリカの獣医療では安楽死が選択される事が多い、猫の検査をするときは鎮静薬を使う」 という話しを聞いていました。しかしMCSでは安楽死を希望されても安易に受諾しない、鎮静は殆どかけていませんでした。これは Dr.Plotcick の方針でもありますし、MCSに集まる飼い主さんは猫に対する気持ちが強いからだとも話していました。もちろんMCSの治療方針ををアメリカ獣医療のスタンダートとして捉えることはできませんが、都心部の専門病院では安楽死は減少傾向にあるようです。
やはり実際に行って自分の目で確かめることは大切ですね。2人の獣医師に猫の臨床について話していて納得する部分も多く今までやってきたこと、勉強の方向性は間違っていないなと実感しました。今回研修で学んだことを今後の診療に活かして行こうと思います。