先日 ISFM(国際猫医学会 International Society of Feline Medicine)の学会に参加させて頂きました。ISFMの学会に参加するのは実に2012年のブタペスト以来と6年ぶりでした。今年はイタリアの南部ソレントで行われました。
今回のテーマは「猫の泌尿器と腫瘍」でした。猫の泌尿器疾患というと、特発性膀胱炎(FIC)、尿路結石、慢性腎臓病(CKD)など、このブログでも扱ってきた猫に多い病気ばかりです。猫の腫瘍ではリンパ腫、口の中の腫瘍、新しい化学療法の使い方、などがテーマになっていました。
特に気になったテーマは「慢性腎臓病ステージ1のナゾ(Feline CKD:The enigma of IRIS Stage1)」でした。ステージ2以降の腎臓病の治療ではリンとタンパク質の含有量を抑えた療法食が大きな効果があることはわかっていましたが、それ以前のステージ1の猫では療法食を与えるべきか否か、という議論は以前から行われてきました。
今回のスピーカーの意見では、早期にリンを制限することで高カルシウム血症を起こしやすくなるため、通常の年齢に即したフードを推奨するというものでした。ただし、ステージ1でもタンパク尿が出ている場合は、タンパク尿を抑える薬と組み合わせて療法食を使います。
なぜなら、腎臓療法食はタンパク質の量も制限されているからです。そのほかにもケースによって細かく分かれるのですが、腎臓病において療法食をいつ始めるかという質問について、自分の考えをまとめる上で大変参考になりました。
腫瘍の分野で気になったのは「診療における腫瘍疾患猫のQoL(Quality of life in clinical oncology practice ) 」でした。QoLとはクオリティ オブ ライフの略で生活の質という意味になります。腫瘍の治療ではがんを小さくするだけでなく、いかに苦しまないで治療できるかが重要です。
今回の講義ではQoLを評価するのに、猫の症状(嘔吐や体重減少)だけでなく、飼い主さんに対してのアンケートを併用する方法を紹介していました。それにより、より飼い主さんの希望に即した治療プランを提案できる様になります。「化学療法を途中でやめたいけれどもうまく獣医師に伝えらえられない」というのは比較的多い悩みで、その解決に繋がると感じました。
さいごに
開業から約2年、長期間職場を離れる久しぶりの機会でした。病院の心配もありましたが、多くのことを学びつつ、気分転換にもなり心底行ってよかったと感じます。イタリアの気候は素晴らしく、地元の人もフレンドリーでトラブルなく帰ってこれました。またイタリアの違う都市にもいつか行ってみたいです。最後にイタリアの猫の写真を載せておきます。