先日の当院の獣医師 多賀が日本ねこ学会(JSFM)でポスター発表をしたところ、キャットフレンドリーアワードを受賞しました。ポスター発表とは、研究成果などをポスターにまとめて展示し、口頭で発表するプレゼンテーションです。
発表の内容
今回は猫の診察中のストレスを定量的に評価する方法を模索しました。これまで顔つきや姿勢から評価する痛みスコア(上の図:グリマススケール)や、入院中のストレスを評価する報告はありましたが、診察に対する評価はありませんでした。キャットフレンドリークリニック=猫に優しい病院を目指す上で、キャットフレンドリー度合いを数値化することが目標です。
既存の評価基準である、DSS(ふるまい=Demenourスコアリングシステム)とCSS(猫ストレススコア)を初診の猫の身体検査中に評価しました。初診に絞った理由としては、何回も来院している猫だと、慣れてスコアが下がるからです。
結果としてはDSSの平均値が2.4、CSSで3.2でした。実際に測定してみると、ハンドリング(体温測定や聴診など)に対する反応を見るDSSの方がスコアリングがしやすいのと、現場の所感に近い結果が得られました。CSSは判断に迷うことも多く、キャットフレンドリーの指標としてはDSSの方が望ましいといえるでしょう。
しかしDSSにも欠点があります。評価が主観的であり、測定者によって基準がばらけます。今後はDSSに加えて心拍数や血糖値などのバイオマーカーと組み合わせるなど、より客観的に評価できる仕組みを検討したいです。
まとめ
キャットフレンドリークリニック(CFC)という認定制度があります。これは猫の医療に関する勉強時間や施設の充実度によってブロンズ、シルバー、ゴールドの3段階で動物病院を認定します。この基準と向き合うことで、キャットフレンドリーの入り口にはなりますが、制度を導入しても効果が実感しにくいという声もあります。
そこでキャットフレンドリーさをなんとか数値化できないかと今回の検証を行いました。人間のストレス評価にはストレスチェクシートなどの調査票を使うことができますが、猫は答えてくれません。DSSは主観的な指標で測定者の影響を受けますが、この数値が下がっていればより猫に優しい医療ができているといえます。
例えば同じ病院で同じ人が1年おきに測定し、前年より低い数字が出ればキャットフレンドリーに近づいた、と言えるかもしれません。猫を専門に診察する当院としては、病気の治療成績はもちろん、キャットフレンドリーさも今後も磨き続けたいと思っております。