猫は他の動物よりも強力な尿臭がしますが、雄猫はさらに香ばしい(?)強い臭いがします。砂漠に生息していた猫の祖先は、濃い尿を作り水分を温存する戦略をとりました。そのため猫は濃い尿を少量出すようになり臭いが強いのです。さらに雄猫の場合ホルモンが影響して強い臭いを出しているようです。
尿臭の原因
尿臭の原因になっているのは、フェリニンと呼ばれる物質です。この物質は尿が実際に排泄され空気に触れるとチオールという物質に変化しあの独特な臭いを発します。もし膀胱内でも臭いが発生していたら猫はもっと臭い動物になっていたでしょう。これはニンニクに特徴的な匂いを与えている物質と似たものです。
フェリニンが作られるのを助ける物質にコーキシンというタンパク質が猫の腎臓の尿細管という場所で作られていることがわかりました。コーキシンを発見したのは日本人の科学者で、猫が好奇心豊富なことと、タンパク質の特徴から命名したようです。英語ではcarboxylesterase-like-urinary-excreated-protein CAUXINと書きます。
フェリニンとコーキシンは去勢後の雄猫や雌猫と比べて未去勢の雄猫で著しく高いことが明らかになりました。コーキシンは生後4ヶ月頃から分泌量が増えることからテストステロンなどの男性ホルモンにより分泌が促進されると考えられます。
ネコの蛋白尿
猫の尿検査で「尿蛋白が軽度陽性ですが、猫は正常でも尿蛋白がでることがあるので問題ありません」と言われたことはないでしょうか。尿蛋白は一般的に腎臓の異常を示す兆候であるにも関わらず、健康な猫でも尿中にタンパク質が軽度含まれているのは、コーキシンのようなタンパク質が含まれるからです。過剰な尿蛋白は猫でも異常所見ですが、若い健康な猫でも尿蛋白がでるのはこのような理由です。
尿臭の強さは猫としての強さの証明
雌猫が交尾相手を選ぶときはとても選り好みをします。決定権は雌猫にあるので、雄猫は自分がいかに素晴らしい猫であるかアピールしなくてはいけません。
フェリニンの分泌量は、食べ物に含まれる高品質のタンパク質の量によって決まります。つまり尿の臭いが強ければ強いほどフェリニンを沢山含んでおり、その猫は狩りがうまいことを示しています。雌猫は尿の臭いからどの雄猫が最高のパートナーになるか見極めているのです。
またマーキングでも強い臭いの尿を残すことで、他の雄猫に対して「この近くには強い猫がいる」と牽制することができます。
まとめ
このような研究が進むことで、より臭いが少ない猫砂の開発などに繋がります。フェニリンやコーキシンはライオンやトラなどの猫科動物には含まれておらず、ボブキャットやリンクス等のネコに近縁の動物に限られるというのも興味深いです。飼い主に高品質なキャットフードをもらっている猫は、フェニリンを多く含んだ尿により実際の能力以上に雌猫にモテるでしょう。嗅覚でのコミュニケーションは猫の世界では非常に重要な意味を持つのでしょう。
おまけ 去勢されていない猫は顔つきも違う?
去勢されていない雄猫はホルモンの影響で体も大きくなります。顔つきも頬のあたりの皮が妙に厚く、丸顔になります。最近では去勢手術をしている猫の方が多いので、丸顔の猫をみるとすぐに去勢していないとわかります。皮が厚くなるのは他の猫の牙から首を守るため、そして噛む力に関係する咬筋が発達するためです。男性ホルモンは尿臭だけでなく顔つきにも影響します。猫の世界では雄猫らしい丸顔の方がモテるのかもしれませんね。