ヒョウ柄のコートを纏った家で飼える猫、それがベンガルです。ベンガルはアジアンレオパード(ベンガルヤマネコ)とイエネコ(イエネコについて詳しくはこちら)を交配して生まれた品種です。今までにない毛柄をもつベンガルの誕生には様々な苦労がありました。アジアンレオパードは完全な野生種なので、野生味が強くイエネコのように人に懐く事は稀です。
人にアジアンレオパードとイエネコの間に生まれた第一子(F1)は警戒心が強く一緒に暮らすのは困難でした。そこでもう少しイエネコの血の割合を増やすために交配を続けました。F1の仔をF2(第二世代、孫)、さらにその仔をF3(第三世代、ひ孫)、そして第四世代以降をSBTと呼びます。SBTまで継代して初めて純血のベンガルと呼ばれます。異種交配なのでF3までの♂は生殖能力がないことが殆どです。
SBTとは??
SBTとは stud book tradition の頭文字。stud bookは血統台帳(血統が記されてるもの。競走馬の世界でよく使われる言葉)、tradition は「伝統」とか「定例」などの意味ですが、うまく日本語にできません。
SBTはTICA(The Internal Cat Association 猫の血統登録機関)が作った単語で、ベンガルの場合そのベンガルが純血で4世代以上アジアンレオパードと離れていることを意味します。SBTはサバンナキャット(サーバルキャット×イエネコ)など他の品種でも使われる言葉です。
上の動画がアジアンレオパードとイエネコの仔猫、つまりF1です。F1はまだまだアジアンレオパードの血が濃いのでかなり迫力があります。
その他のワイルドキャットとの交配種
縞模様ベンガル=トイガー
ベンガル×オリエンタルショートヘアー=セレンゲティ
サーバルキャット×イエネコ=サバンナ
ジョフロイキャット×イエネコ=サファリ
フィッシングキャット×F1~F3ベンガル=ビベラル
などのワイルドキャットが誕生しています
TICAで公認しているのはベンガル、トイガー、セレンゲティ、サバンナですがベンガル以外は日本にブリーダーさんが殆どおらず、私もベンガル以外は直接あったことはありません。
猫の血統登録機関はTICA以外にも沢山あり、もうひとつの大きい団体としてCFA(Cat Fancier’ Association)があります。実はCFAはベンガルを公認していません。
なぜCFAはベンガルを公認しないのか
CFAは1998年、ヒューストンでの会議にてイエネコとイエネコ以外との交配から生まれた猫を品種として公認しない、さらに今後このような交配によって生まれた猫の公認について議論しないと宣言しています。CFAのポリシーの1つにイエネコの種の保存があるからです。CFAにとってイエネコを野生種であるアジアンレオパードと交配することはポリシーに反します。よってベンガル以外にもトイガー、セレンゲティ、サバンナなども当然公認していません。
最後に
サーバルキャットやカラカル、アジアンレオパードなどの野生のネコ種を飼っている方も実は日本にもいます。しかし、野生種のネコ科は気性が荒く、脱走してしまったら大変なことになります。そのため、厳重な脱走防止措置の上、都道府県知事の許可が必要になります。最近ではこのような野生種とイエネコの交配が進んでおり、人懐っこい性格と野生的な外見を持ったベンガルやサバンナなどの猫種が注目されています。私が実際に会ったベンガルの猫たちは人懐っこいこばかりでした。
おまけ
現在世界中に広がっている猫の祖先はアフリカのリビアヤマネコであると考えられています。リビアヤマネコはヤマネコの中では人に懐きやすく、穀物を食べるネズミを追い払えるという人間の利益と合致し、約1万年前から人と暮らすようになりました。
一方、中国の農村部では人とアジアンレオパードが暮らしていた跡が発見されています。しかし現在のイエネコにはアジアンレオパードの遺伝子は残っていない為、どこかで野生に戻ってしまったと考えられます。リビアヤマネコのようにアジアンレオパードも野生種の中では人に懐きやすいのかもしれません。
“ヒョウ柄の猫ベンガル 誕生の歴史と特徴” への1件のコメント