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布を食べる猫 〜ウールサッキング〜

ウールサッキングとは猫が布を食べてしまうことです。ウールに限らず綿、麻、ダンボールやゴム製品などを食べる猫もいます。「ウール吸い」または穴を空けてしまう場合は「ウール噛み (wool chewing)」と呼ばれることもあります。

当然猫はウールを消化できないので、腸に詰まってしう可能性があります。便と一緒に出せれば問題ありませんが、完全に詰まってしまうと手術が必要なことも。

ウールサッキングをする猫の多くは0〜1歳ですが、4歳になってから初めてこの行動が出る猫もいます。

なんでウールサッキングをするの?

はっきりとした理由はわかっていません。シャム猫やビルマ猫などの東洋系の猫種で多いことから、遺伝が関係しているのではと考えられています。

羊毛の根元に付着している油分(ウールオイル)を生成したものをラノリンと呼び、このラノリンに反応してウールサッキングが引き起こされているといわれています。

また一部の猫は人間の腋からでる汗の匂いに反応し、飼い主が着ていたシャツなどを好んで噛んだり、シャツの上で寝たりします。腋の汗の匂いがラノリンに似ているからと考えられています。

ウールサッキングは離乳前から人間に育てられた猫や、早期離乳した猫に多いです。このことから母親にもっとも甘えたかったストレスで、吸入行動が残るのではないか、それが過剰になりウールサッキングを起こしているではないか、とも考えられています。

ウールサッキングの治療方法

残念ながらウールサッキングの治療は非常に困難で、複数の方法を併用しても効果があがらない猫が多いです。少しでも高価が期待できる方法をいくつか紹介します。

①高繊維食フード

繊維を好むのであれば食物繊維を含んだフードを食べさせれば良いのでは、と考えられた治療方法です。具体的にはロイヤルカナンのw/d、ヒルズコルゲートの消化器サポートを使うことが多いです。

 

この治療法はいくつかの獣医学書に書かれていますが、残念ながら高繊維食単独で症状の改善がみられたことはありません。ただしフードを変えるだけなので実践しやすい方法です。

②食事を好きなだけ食べさせる

食事を与えなかったり、食事が不足するとウールサッキングが悪化するため、常に満腹感を与えると改善がみられることがあります。しかし当然ながら肥満になる可能性が高いので、他の治療法で改善がない場合に最終的な選択肢として検討すべき方法です。

③沢山遊ぶ

猫が寂しくないように、短い時間の遊びを複数回行うと良いでしょう。新しいオモチャ、箱、キャットタワーなど飽きがこないようにしてあげましょう。また転がすとフードがでるようなオモチャや、部屋のあちこちに少量の餌を隠すなど、猫の狩猟本能を刺激するような工夫も効果的です。

④噛み付く対象に嫌な味や臭いをつける (嫌悪条件づけ)

古典的な方法ですが、猫がある特定のものだけ(例えば、靴下)を噛みちぎるのであれば効果的です。あえて靴下を出しっぱなしにして、カラシや柑橘系のスプレーなど猫が嫌がる臭いをつけておきます。「靴下は嫌な臭いがするもの!」ということを学習してもらい、近づかなくなるまで続けます。

他にも噛み付こうとしたら、霧吹きで水をかける、頭を小突く、掴んで飼い主がいない部屋に連れて行く、など猫にとって不都合なことが起こることを覚えさせます。これらを嫌悪条件づけと呼びます。

⑤猫が噛み付く対象を隠す

最も効果的な方法です。猫が噛んだり、食べようとする物を引き出しの中など猫が絶対に届かない所へ隠してしまいます。この方法は布団やカーペットなどなんでも噛みちぎる猫の場合、全ての布製品を隠さなければいけないので現実的に困難なことがあります。

日中家を空けなくてはいけない飼い主さんの場合は、ケージで猫を布製品から隔離すると日中のウールサッキングを防ぐ事が出来ます。

⑥お薬を処方してもらう

一部のウールサッキングをする猫は強迫性障害が関係しているかもしれないと考える獣医師もいます。脅迫性障害とは、不安や不快な考えが浮かんできて、抑えようとしても抑えられない行為を繰り返すことです。人間では何度も手を洗わないと気が済まない、という潔癖性が強迫性障害の例として広く知られています。

布に噛み付いているときに異常に興奮している場合は強迫性障害を持っているのもかもしれません。そういった場合はセロトニンを増加させる薬を処方すると症状が改善することがあります。

まとめ

残念ながらこれらの方法を駆使してもあまり改善がみられないことが多いです。ウールサッキングは殆どの猫は2歳までには自然にこの行動をやめるので、「それまでは噛み付く対象から猫を隔離する」というのが現実的な対処方法になってしまうことが多いです。