第7回は臨床病理学についてです。あまりピンとこないかもしれない分野ですが、診察現場で日常的に行われる様々な検査(血液検査や尿検査、細胞診検査など)について研究する分野で、我々がより的確な診断をするのに非常に重要な分野です。
どんな検査でも1つの結果ですべてがわかるわけではなく、また1つの結果が必ずしも正確というわけでもありません。検体が適切に回収され、適切に取り扱われることが大前提となります。また、検査結果の解釈も、それぞれの検査項目の変化に与えうるその他の影響がないかなど、他の検査と合わせて考えていく必要があります。
今回はモジュールを踏まえながら、日常的に行われている血液検査・尿検査・便検査がどのように行われているか解説していきます。
・血液検査
血液検査は院内で結果がすぐでるものと、検査会社に外注するものとに大きく分かれます。院内検査は少ない検体量で迅速に測定ができる反面、検査できる項目に限りがあったりします。外注検査のほうが検出度の高い検査方法で測定できますが、結果が出るまでに時間を要したり1つの検査項目に対して血液量がたくさん必要になったりなどのデメリットもあります。
まず採血を行います。猫の採血は後ろ足の付け根(内側伏在静脈)・前足の血管(橈側皮静脈)・首の血管(頸静脈)のいずれかから行います。当院では、基本的には後ろ足から取りますが、抗がん剤治療中の猫さんは可能な限り足の血管を残しておくために検査用の採血は首から行います。前足は、皮膚が厚く血管もあまり太くないため普段はあまり使用しません。
採取した血液は検査に応じたチューブに分けていきます。基本的にはEDTA管(紫キャップ)とヘパリンリチウム管(緑キャップ)というものを使います。外注検査に出す際には血清管(オレンジキャップ)を使用することもあります。
体の中の臓器の機能やダメージ具合などを評価する血液生化学検査では血液の上澄み(血漿・血清)を使います。回収した血液は遠心分離機にかけられチューブ内で上清と血球とに分けられます。
この時点での上清の色も重要になります。例えば、通常透明な液体である血清が黄色い場合、これは黄疸を意味し、肝臓の病気を疑ったり貧血の原因を考えたりする手助けとなります。
<血小板が少ない!>
猫の血液検査のとき、「血小板数」の項目が少なく出ることがあります。検体が検査されるまでに時間がかかったりしても起こりますが、適切な検体取り扱いでも生じることがあります。猫の血小板はclump(だま)になりやすく、機械で測定した際に複数の血小板が1つの塊として認識され、ほかの細胞として誤ってカウントされてしまうことがあります。現場では、このようなことが生じた場合には血液塗抹を作成し、実際に目視で血小板があるかを確認しています。
・尿検査について
尿検査は基本的に病院内で完結することが多く、膀胱炎などがあった場合に外注検査で「細菌培養検査」を行い実際に細菌に感染しているか、その場合にはどの抗菌薬が使えるかをチェックします。
尿検査で用いるおしっこの回収方法は3種類あります(下の表)。
病院では膀胱穿刺採尿かカテーテル採尿を行うことが多いです。健康診断などの際には自宅で採尿してもらうこともあります。
自宅で回収した尿は6時間以内のものが好ましく、病院に持ってくるまでは冷蔵庫で保管してください。
冷蔵庫で冷やしすぎると結晶が出てくることがあるので、なるべく新鮮な尿をもちこみましょう!
尿検査では、おしっこの色・濃縮度・pH・タンパク質・尿沈渣などを確認していきます。
これらの検査項目も、どの方法で回収されたのか、検査までどのくらいの時間が経っているか、他の検査で関連する検査項目に変化があるのか、検査前の猫さんの状況などに影響されます。
全ての検査において言えますが、異常値が出た場合にはより詳しい検査を行うとともに、日を分けて何度か検査することも重要になります。
気になることがあった際には、かかりつけの獣医師と相談しながら再検査を行なっていきましょう!
次回は、猫の救急医療についてです。