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猫の飲水量を増やす 7つのコツ

猫はもともと飲水量が少ない動物です。猫の祖先はエジプトの砂漠に住んでいたため、自然と水分を温存するように進化してきました。そのため少量の濃縮された尿を排泄します。

沢山の水分を必要としない一方、年を取ってくると腎臓の機能が低下しやすい特徴があります。これは濃縮した尿を作るのに腎臓に負荷がかかるのと、慢性的に飲水量が少ないからではないかと考えられています。

腎臓病や尿路結石になったときに動物病院から「水分を沢山とるように」と指示されることがあるかと思います。しかし水分を摂るようにと言われても実際に飲むのは猫です、なかなか思うように飲んでくれないと相談を受けることが多々あります。今回は自宅でできる飲水量をupさせる工夫を紹介します。

1水は常に新鮮に

基本的なことですが、放っておくと結構ほこりが浮いていたりするものです。水は1日2回、夏場は3回交換しましょう。

2水飲み場の配置に注意

お水のお皿をご飯皿のすぐ隣に置いていることが多いですが、実はこれあまり良くありません。海外学会では食事と水飲み場が別々なので隣に置いても良いが、他の場所にも水飲み場を設置することを推奨していました。猫本来の生活では食事場所と水飲み場が離れていること、食べるときにフードがお水に入り水が痛みやすいという理由です。

フードとお水を並べてもokですが、他の場所にも水飲み場を設けましょう。

 

家の大きさにもよりますが、リラックススペースの近く、猫が良く通るところに満遍なく3箇所くらい置いておくと良いでしょう。人通りが多い場所、トイレの近く、騒音(洗濯機の近く)があるところなどは適しません。

3容器について

あまり小さすぎる容器では水を飲むのがおっくうになってしまいます。基準としては猫のヒゲがぶつからないようなフラットな容器が望ましいとされています。容器は猫のこだわりがあるようでホテルでお預かりするときも自宅で使っているものを持ってきて頂くことがあります。

4流れる水が好きな猫へ

ある種の猫は洗面台や風呂場の流れる水を好んで飲みます。流れている水は新鮮ということを本能的に知っているのかもしれません。そういはいっても一日中蛇口を流したままにしておくわけにはいきません。解決策としてウォーターファウンテンという循環装置があります。

一概にどれが良いといえませんが、様々なデザインが販売されています。欠点としては掃除が煩雑なこと、猫が音を嫌うことがあります。ある研究では僅かな差ですが、流れている水の方が飲水量が増えたという結果がでています(Christopher P & Jacqui N. 2010 )

5食事の回数を増やす

ある研究では同じ量のフードを1度に与えるよりも、小分けにして与えた方が飲水量を増やすことに成功したと報告しています(Kirschvink et al 2005)。また食事回数を増やすことは運動量の増加も見込めるようです。(Deng P et al. 2014 )

6食事をウェットフードに替える

黒い部分=フードから摂取した水分、白い部分:水を飲んで摂取した水分。一番左がウェット(カン)を食べた猫の1日の水分摂取量です。黒いバーはフード中の水分を示しています。ドライが3つ並んでいるのはナトリウム濃度が違いによる比較のためです。ナトリウム( NaCl)を4.6%(右から二番目) まで増やしてもウェットフードの方が1日の水分摂取量が多いことがわかります。Intermediate はセミモイストフードのことです。 Water balance in the dog and cat. R.S. Anderson

ドライフードの水分率が10%以下なのに比べ、ウェットフードでは80%ほどが水分です。そのためウェットフードに切り替えると食事と一緒に水分を摂取するので、水飲み場からお水を飲む頻度は減ります。ある研究ではトータルの水分摂取量(食事に含まれる水分+飲水量)はウェットフードを与えた方が多いとう結果が出ています。(Burger et al. 1980)

尿路結石が再発する猫で療法食を食べてくれないとき、ウェットフードにすることで問題が解消することがあります。それはトータルの飲水量が増え、結石ができにくい環境になるからです。

7水分摂取補助ゼリー 匂いつき水

超高齢であったり病気が進行している場合、猫が自ら水を飲むほど元気がない状態では上記のような対処法では飲水量を増やすことは難しいことが多いです。そのような猫には水分摂取するためのゼリーを舐めさせることも。猫の飲水を刺激する匂いや、脱水時に不足しやすいミネラルが含まれています。他にも猫が好む匂いつきの水もありますし、ささみの煮汁などで匂いをつける方法もあります。

まとめ

日常的な飲水量を増やすのか、治療の一貫として脱水を改善させるのかによってアプローチは大きく異なります。後者の場合は必ずかかりつけの獣医師と相談しながら治療プランを立ててください。猫は腎臓や膀胱などの病気が多いです。しっかりと水分を取ることが健康的な長生きに繋がるでしょう。