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猫とトイレ〜猫にとって好ましいトイレの8個のポイント〜

「トイレ環境を改善してください」と動物病院で言われたことはありませんか?

猫は綺麗好きな動物で、トイレに関してもかなりのこだわりをもっています。トイレが気に入らないと使ってくれなかったり、使いはするけど、実はストレスを感じているかもしれません。

不適切な場所での排泄や、尿路結石や特発性膀胱炎、猫下部尿路疾(FLUTD)の再発を抑えるために飼い主さんの家のトイレ環境を聞き、改善点を提案することがあります。

こまめにお掃除する、砂を変える、トイレの数を増やすなど沢山項目がありますが、診察中に話されても全て覚えられません。今回は8個のポイントに分けてまとめました。

 

 ①掃除

掃除はトイレ環境改善の最初の一歩です。やはり人間も綺麗に掃除されたトイレでゆっくりしたいものです。こまめに掃除してあげましょう。

日中お仕事等で長時間家を空ける場合は複数個のトイレを設置することで常に綺麗なトイレを使うことができます。また全自動やシステムトイレにすることで解決できるかもしれません。(システムトイレ、全自動トイレにつていは後述)

砂の全交換:意外と忘れがちなのが、砂の全とっかえと、トイレボックスの洗浄です。1ヶ月に1回ぐらいが目安になります。臭いを気にする猫の場合は2週間で全交換してあげましょう。

②トイレの場所

遠さ:トイレが遠いと、気軽にトイレに行かなくなり我慢してしまいます。3階の角の部屋など、行くのに手間がかかる場所は避けましょう。

猫が一番長く過ごすスペースをコアエリア(core area)と呼びます。家猫は一日の75%をコアエリアで過ごしているので、コアエリアの近くに必ず1つはトイレを置きましょう。

障害がない場所:距離は近くても行動を制限するベビーフェンスや、風で閉まりやすい扉など、障害があるとトイレへ行けません。いつでもトイレへ行けるルートが確保されている場所に設置しましょう。

犬や他の猫と多頭飼育の場合は、支配的な動物がトイレへのルート上にいると精神的な障害が生まれ、我慢してしまうこともあります。支配的な動物のコアエリアからトイレが離れていること、そしてトイレへのルートは2つ以上確保されていることが望ましいです。

騒々しい場所はNG:乾燥機、洗濯機、キッチン周りは生活音が多く不適です。道路に面した場所を不定期に外から車の音や、声が聞こえてくるのでトイレの場所としては落ち着きません。また人通りの多い廊下などもトイレ中に人がくるとトイレをやめてしまいます。

ご飯の横:ご飯の横にトイレを設置するのは私たちでも嫌ですよね。ケージ内などスペースが限られる場合は仕方がありませんが、可能な限り食事場所とは離してあげましょう。

③トイレの数

トイレの数は猫の数+1個が理想的です。トイレが複数あれば日中トイレ掃除が長時間できない時でも綺麗なトイレを猫が選んで使えます。また他の猫と同じトイレを使うことを嫌がる猫もいます。

10匹以上などのいわゆる超多頭飼いの場合は猫のグループの数以上はトイレを置きましょう。3匹×3匹×4匹のグループなら3つ以上のトイレが必要となります。

お住まいが複数階ある場合は最低1階に1つのトイレを設置することが望ましいです。

④トイレのサイズ

基本的に大きい方が良いです。トイレのサイズは猫の全長の1.5倍以上が望ましいとされています。

残念ながら市販のトイレの殆どがこの基準を満たしていません。大柄な猫では市販のトイレだと狭いので、大きなプラスチックトレイで代用するといいかもしれません。

トイレの縁に乗っかりながら用を足す猫がいますが、これはトイレが小さすぎて窮屈に感じている可能性があります。少し大きいトイレを試してみて下さい。

トイレの「深さ」については猫の好みが分かれますが最低3cmは欲しいです。あまり深いトイレでは入り辛いですし、低すぎると砂のかけ心地がよくありません。愛猫の好みを知るには複数のトイレを設置し、テストしてみると良いでしょう(下図)。

トイレのボックス以外の条件(砂、場所)を揃え、どのトイレを好んで使用するかチェックしています

 

⑤トイレのタイプ

屋根付 or 屋根なしトイレ:屋根付きのトイレは砂の散乱を防げますが、臭いがこもり嫌がることが多いです。野生のネコ科動物が洞窟や茂みで用を足す習慣はありません。

ある研究では、十分に掃除が行き届いているという条件であれば、屋根付き、屋根なし、猫の好みに大きな差はなかったと報告しています。

しかし、国際猫医学会(ISFM)のガイドラインでは、トイレへ容易にアクセスできるため、屋根なしの方が良いのではないかと考えられています。

トイレの縁:縁が高すぎるトイレも乗り越えるのに抵抗があります。若いうちは大丈夫ですが、猫も年をとると運動能力が下がりますし、関節炎にもなります。スっと気軽に入れるような低い縁のトイレがいいですね。

全自動タイプ:神経質な猫だと機械音が気になり、怖がることがあるようです。いろんなタイプの全自動式トイレがあります。個人的には全自動のトイレを使ったことはありません。

基本的には屋根なし、大きめ、縁は浅めのトイレが自然環境に近いとされ推奨されています。

⑥猫砂

猫砂は沢山の種類があり、猫の好みが最もでやすい項目です。基本的には粒子が細かい、臭いがない、固まりが良い砂が好まれます。つまり砂かきのしがいがあり、スッと固まるものです。以下それぞれの特徴をまとめました。

鉱物タイプ:別名ベントナイトです。もっともクラシックで、自然環境(土、砂)に近いでしょう。ある研究では鉱物タイプが猫にもっとも人気であったと報告しています。

その他のメリットとして比較的経済的なものが多い点が挙げられます。デメリットは運ぶのに重い、処理が煩雑、粉が舞うなどです。

植物由来タイプ:木材やおから、コーンなどです。再生紙もここに入ります。軽いため持ち運びが楽です。また薄い色のものが多く、尿色の変化に気がつきやすいでしょう。

商品によってはトイレに流せるものもあります。毛につきにくいので、長毛猫にもオススメできます。また生分解性のあるのものは堆肥として使うこともできます。デメリットは塊力の弱さ、粉が舞うなどでしょう。

シリカゲルタイプ:白い小石のようなのがシリカゲルです。メリットは消臭力が強力で、抗菌作用があります。デメリットは処理が煩雑なこと、そして比較的高価なものが多いことです。

シリカゲルタイプ

ダラスの猫学会では、トイレ掃除の手間やコストを度外視すれば園芸用のピートモスが一番いいのではと紹介されていました。

システムトイレ:スノコ上になっており、おしっこが砂を通過し下に敷いたシートに吸収される構造になっています。システムトイレは掃除の回数が減り、おしっこ臭を抑える力も強いので非常に便利です。

しかしスノコに乗る分高さが出るので、砂をかくときの不安定感や、システムトイレ特有の大きめの猫砂を嫌う猫もいます。他にシステムトイレのデメリットとしては、一回の尿量が確認できないという点もあります。

うちのこはシステムトイレ用の砂でも問題なく使用してくれました。

猫砂もやはり猫によって好みが異なります。トイレボックスのように条件を合わせて好みの砂を選んでもらうと良いでしょう。

猫砂を買うのは飼い主さんです。そのためメーカーは飼い主さんの利便性を前面にPRしがちですが、実際に使うのは猫です。まずは愛猫の好みを第一に考え、その中で利便性が高いものを選ぶと良いでしょう。

 ⑦臭い 

やはり臭いの染み込んだトイレは猫も嫌がります。研究でも臭いが強いトイレを猫は避けるという報告があります。人間では気にならないかすかな臭いでも嗅覚が鋭い猫は気づきますので、気をつけましょう。

トイレに染み込んだ尿の臭い:長期間プラスチック製のトイレを使っていると尿とプラスチックが反応を起こし独特の臭いが発生します。これは洗ってもなかなか落ちないので新しいものと交換すると良いでしょう。

洗剤:猫は柑橘系の臭いを嫌います。柑橘系の洗剤でトイレを丸洗いすると、臭いがうつってしまうので避けて下さい。柑橘系以外でも強い香りの洗剤は注意です。

⑧トイレでのトラウマ

最後はトイレでのトラウマについてです。トイレで嫌な思いをすると原因に関係なくそのトイレを避けることようになることがあります。そうした場合はトイレ本体を替える、場所を変えるなど一度思い出をリセットするとまた使ってくれるかもしれません。

痛みの伴う排泄:便秘や尿路結石など、病気による痛み。

トイレ付近での出来事:トイレの近くで捕まえられ薬を飲まされる、そのまま病院に連れていかれるなど。トイレの中だけでなくトイレ周辺にいるときは嫌がることはしない方がいいです。

トイレ中の恐ろしい出来事:トイレ中に落雷のような突発的で大きな音や地震などが起こると怖くてトイレに入らなくなる可能性があります。

最後に

不適切な場所での排泄やFLUTDは再発率が高い病気です。トイレ環境を改善してもすぐに効果がでない、実際効果が出ているのかも分かりづらいため不安になる飼い主さんが多いです。

猫のトイレは奥が深く、さらに細かいチェックポイントはいくらあげても切りがありません。猫にとってトイレが大事なものであることを理解し、ストレスなくトイレに入れるよう、トイレ環境を見直してみましょう。

※不適切な排泄やFLUTDの原因は様々です。根本的な原因があるとトイレ環境を改善しただけでは良くなりません、かかりつけの獣医師のと相談しながら治療することをお勧めします

参考:AAFP and ISFM Guidelines for Diagnosing and Solving House-Soiling Behavior in  Cats. 2014