エリザベスカラーとは、動物が傷口や皮膚を舐めないように、もしくは注射などの時に噛まれないように、首につける道具です。エリザベス朝時代の衣服に似ていることから名前がつけられているようです。
エリザベスカラーの歴史は長く、犬や猫が動物病院に行くようになった数十年前からあります。調べてみたら1959年にアメリカで特許をとっているようです。エリザベスカラーを使う状況は以下の通りで、避妊手術の時に初めてつけたことがある猫ちゃんも多いでしょう。
しかしカラーが苦手な猫も多く、「他に方法はありませんか?」とよく聞かれますが、なかなか良い代替法がなく、古典的なエリザベスカラーを動物病院でも使っています。傘の形が何百年も変わらないように、エリザベスカラーもある意味完成されたデザインなので何年経ってもあまり進化しないのでしょう。
それでもここ数年、素材や硬さにレパートリーが出てきました。病院で働いていると毎日使う必需品ですので、日々エリザベスカラーを選んでいる身として、それぞれの長所・短所、選び方についてまとめてみました。
1.プラスチック 固め
製品名:アニマルネッカー
メーカー:メニックス
十分なプラスチックの厚さと、ボタンの強度があり、今回紹介するカラーの中で一番抑止力(カラーにより猫の行動を抑える力)が高いといえるでしょう。病院で猫が興奮して噛まれる危険性が高い時、絶対にカラーが外れてほしくない状況(骨折や尿路系の手術の後、漏れたらまずい点滴など)で主に使われます。
一方で硬く、厚みもあり重いのでつけ心地は、この中ではあまり良くないでしょう。メニックスは動物用のICU(集中治療室)や手術台も作っている、動物医療界の老舗企業です。
2.プラスチック 柔らかめ
製品名:アニマルカラーポピー
メーカー:堀機械商事
アニマルネッカーに比べると素材が薄く、ソフトで軽いのが特徴です。ただし、猫が本気で噛もうとすると簡単に貫通するので怒っている猫には使うときは注意です。デザインも小さな切れ込みが入っており、可愛らいし印象があります。イエロー、ピンク、グリーンの3色から選べます。個人的に猫は黄色が似合うと思っています。
布カラーと比べるとまだ硬いですが、洗浄・消毒のしやすさ、頻回使用も可能な耐久性の高さはプラスチックカラーの長所です。バランスがよく多くの動物病院で使われている定番カラーです
3.ビニール/ 布カラー 柔らかめ
製品名::フェザーカラー 透明・ソフト
メーカー:nekozuki
視界を遮らないビニール素材かつ、非常に軽く柔らかいためつけ心地は一番良いでしょう。プラスチックだと壁や柱にガシガシぶつけてしまう猫の自宅管理や、少しだけ嫌がる猫の爪切りや採血時に活躍します。
デメリットは柔らかいので折り曲げて舐めてしまったり、外しやすいことでしょう。また個人で使う分には問題ありませんが、病院使うには消毒しにくく、耐久性が低いです。国産・手作りのため、この中では高価でもあり、飼い主さん自身にサイトから買ってもらっています。同デザインの布製もあります。
4.布カラー 固め
製品名:WZ PET エリザベスカラー
メーカー:WZ PET
布製でも厚みがあり、芯がある固めのカラーです。柔らかい布では曲げてしまったり、サイズも大きめなので、口が出て舐めてしまう猫にも使えます。抑止力もそこそこにあり、アレルギー性皮膚炎のように長期間つける必要がある場合に適しています。デメリットとしてはちょっと重いので、小さい猫はあまり向きません。またマジックテープで装着するため、力に弱く、猫が外し方を学習しがちです。
5:浮き輪型
製品名:ペット介護エリザベスカラー
メーカー:Green Leaf Zakka
厚みを出すことによって、直径を小さくしても、エリザベスカラーの効果を維持できるのが浮き輪型です。猫の動きやすさと、抑止力のバランスが良いです。輪っかなので外れにくいのも特徴です。デメリットとしてはクッションがそれほど固くないので、本気で舐めようとするとカラーを曲げて届いてしまいます。Green Leafはマタニティウェアなどを作っている会社のようです。
まとめ
それぞれのカラーの特徴をまとめました。当院でも猫の性格、カラーをつける理由から適宜選んで使っています。例えば、それほど抑止力が必要ない避妊後の術後などは一番つけ心地が良いフェザーカラーがおすすめですし、真菌の皮膚炎など、選択/消毒も必要な場合はプラスチックカラーがおすすめです。ネットに沢山ありすぎて選べないという方は、こちらをエリザベスカラー選びの参考にして頂ければ幸いです。
番外編:着るエリザベスカラー エリザベスウェア
製品名:エリザベスウェア
メーカー:Full of Vigor
カラーではありませんが、術後に着る洋服もあります。首周りは一番スッキリしていますし、運動もほとんど邪魔しませんので、慣れれば一番ストレスが少ないでしょう。デメリットとしては、服の上から噛んで自分で抜糸してしまったり、布をかじる猫には向きません。またお尻や腕の先などは守れません。