yQTXhq

猫にミネラルウォーターを飲ませたいのですが?

この質問に対して「猫は尿路結石ができやすい動物なので硬度の高いミネラルウォーターは避けてください」と獣医師から回答されることが多いでしょう。過剰なカルシウムやマグネシウムは尿路結石のリスクを高めますので注意が必要です。今回は猫とミネラルウォーターについてもう少し詳しく考えてみましょう。

1. ミネラルウォーターとは?

飲料水のうち地下水を原水とするもの、と定義されています。反対に地下水ではないものはボトルドウォーター呼ぶようです。「ミネラル」とついていますが、ミネラル成分(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)の含有量は様々であり、水道水よりもミネラル成分が少ないミネラルウォーターもあります。

水道水は消毒のため塩素を含んでいるためカルキ臭がありますが、ミネラルウォーターは加熱、紫外線やオゾンにより殺菌を行っています。ミネラルウォーターの方が美味しく感じる方が多いのはこのためでしょう。

ペット用ミネラルウォーターとは?

犬や猫に配慮して硬度の低いミネラルウォーターをペット用として販売されているものです。殆どのメーカーで人と同じ衛生基準をクリアし、人が飲んでも問題無いと説明されています。

2. 硬度とは?

水質を表す指標の1つです。硬度が高い水(例、エビアン、コントレックス)の方が苦く、鉄臭い味がします。水のカルシウム濃度とマグネシウム濃度を元に簡易的に計算して求められます。

硬度=(カルシウム mg/L × 2.5)+(マグネシウム mg/L× 4.1)

※1リットル当たりの量で計算してください

硬度により以下のように分類されます

スクリーンショット 2014-12-03 16.56.24
世界保健機関(WHO)による基準

水道水の硬度は?

日本の水道水の硬度は地域よってばらつきがあります。日本の水質基準では硬度は300mg/L以下とされていますが、平均40〜70mg/Lです。平成25年の東京都渋谷区の水道水の硬度は51.5mg/Lでした。

3.結石の種類

猫ではストルバイト結石、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸塩、シスチン、キサンチン、シリカなどの結石が報告されています。ストルバイトとシュウ酸カルシウムが大半を占めますので今回はこの2つの結石について解説します。

ストルバイト結石

別名「リン酸アンモニウムマグネシウム」です。その名の通り尿中のマグネシウム、アンモニウム、リンが増えると形成されやすい結晶です。特に乾燥した状態でマグネシウムが0.15%〜1.0%含まれるフードを食べた猫はストルバイト結石の発生率が高くなるという報告があります。

AAFCO(全米飼料検査官協会:詳しくはこちら)の基準では成猫のフード中のマグネシウム含有率は0.04%以上としています。一般的なフードのマグネシウム含有量は乾燥状態で0.06〜0.1%です。

リンも過剰に摂取するとストルバイト結石ができやすくなりますが、一般的なミネラルウォーターのリンの含有量は非常に微量、もしくは1mg/L未満です。

シュウ酸カルシウム結石

人間の尿路結石では70〜80%がシュウ酸カルシウム結石だそうです。やはりカルシウムの過剰摂取や、血中カルシウム濃度が上昇する病気(上皮小体機能亢進症)があるとこの結石ができるリスクが上がります。シュウ酸は多くの食物、とくに植物に含まれており、カルシウムと結合しやすい特徴があります。

カルシウムとシュウ酸を同時に摂取することで、腸の中でこの2つが結合し、便として排泄され、シュウ酸の吸収を妨げます。単純にカルシウムを制限すればシュウ酸カルシウム結石のリスクが下がるという訳ではないので注意が必要です。

シュウ酸は特にほうれん草やブロッコリーに多く含まれるため、一度シュウ酸カルシウム結石ができた猫にはこれらの植物は与えない方がよいでしょう。

 

4.尿路結石のリスク因子

少し話はそれますが尿路結石のリスクについて。尿路結石に共通のリスクとして、遺伝性、運動不足、肥満、トイレ環境、飲水量があります。またシュウ酸カルシウムの場合はオス猫の方が1.5倍なりやすいという報告があります。

結石がどのくらいできやすかを評価する「RSS(Relative SuperSaturation:相対過飽和)」という指標があります。これはカルシウムやマグネシウムなどを含んだ10項目と尿のpHから計算されます。

多くの項目が複雑に絡み合ってRSSが算出されます。そのためペットフードのラベルのマグネシウムの項目をみて「このフードはマグネシウムが0.09%だから0.08%のフードよりもストルバイトができやすい」というふうに1つの項目だけでは判断できないので注意してください。尿路結石が気になる方は獣医師に相談してフードを選びましょう。

5.水道水の意外なメリット

水道水の残留塩素により雑菌が増えにくいメリットがあります。どうしても置き水になってしまいますので、特に夏場にこまめに水を交換できない時でも少し安心です。もちろん多くの猫は水道水で暮らしていますので、ミネラルウォーターでないと病気になってしまうということはありません。

まとめ 

・硬度はマグネシウムとカルシウムの量により決定される

・過剰なマグネシウムとカルシウムの摂取はストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)やシュウ酸カルシウム結石のリスクが高くなる←硬度の高いミネラルウォーターはマグネシウムとカルシウムが多いので避ける

・尿石のリスクの指標(RSS)は多くの項目が複雑に絡み合っており、マグネシウムやカルシウムの含有量だけではRSSは予測できない

・もちろん水道水でもok

過去に比べて尿路結石の猫はキャットフードの質の向上により減ってきています。昔の猫はねこまんまや残飯を食べていましたが、今は尿石に配慮されたキャットフードを食べています。

キャットフードでも尿石ができる猫がいる反面、残飯を食べていてもできない猫がいるのは、栄養面以外の遺伝、体質、飲水量、環境などの要因が絡んでいるからです。愛猫が結石がどのくらいできやすいのかは、外見からはわかりませんので硬度の高いミネラルウォーターは与えない方が安心でしょう。

結局どのぐらいの硬度のミネラルウォーターならいいの?

多くの猫は水道水を飲んで暮らしていますので、他の項目が顕著に高くなければ水道水と同程度の硬度のミネラルウォーターは猫に与えても安全と考えることができるでしょう。日本の水道水の硬度は平均40〜70mg/Lです。

水道水の硬度は地域によって異なり、海外では水道水が超硬水(180mg/L 以上)の地域もあるようです。地域によって結石の発生率や多い種類が異なるのはこれが関係しているのかもしれません。

硬度はマグネシウムとカルシウムの値しか反映していませんので、他の項目でナトリウムが顕著に高かったり、pHが大きく偏っているミネラルウォーターもあります。そういったものは避けたほうがベターです。与える前にかかりつけの獣医師と相談してください。

 

おまけ

乾燥状態でマグネシウム0.1%を含むフードと硬水として有名なヴィッテル(硬度315mg/L マグネシウム 19.99mg/L)を飲んだ場合どのくらいマグネシウム含有率は上昇するのでしょうか。

ある猫が上記のフード60g(水分10%とすると乾燥状態で54g)、ヴィッテル160mlを1日に摂取するとします。

フード:54g × 0.1%=54mg  ヴィッテル:19.99mg ×160/1000=3.184mg

1日のマグネシウム摂取量は 54+3.184=57.184mg となります。これをフードに含まれるマグネシウム量と考え、乾燥状態の重量で割り「%」に戻すと

58.184mg ÷ 54g =0.105%

0.005%上昇しました。この計算を超硬水であるコントレックス(硬度1468mg/L マグネシウム 74.5mg/L)で行うと0.12%でした。流石にコントレックスはかなり上昇しましたが、マグネシウムとストルバイトの発生と関連性を報告した論文の0.15%には届きませんでした。

 

しかし上記の注意事項のように、マグネシウムやカルシウムの摂取量だけでなく多くの因子が絡み合って結石は形成されます。マグネシウムに限定した計算は意味がありません。猫に硬度の高いミネラルウォーターを与えるメリットはないので、やはり軟水のミネラルウォーターの方が安心です。

 

“猫とミネラルウォーター” への2件のコメント

  1. この記事が今年最後でしょうか。
    先生のブログはなにかとタイムリーで参考になりました。
    ありがとうございました。
    よい、お年を。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
また、* が付いている欄は必須項目となります。