当院の病院名「TOKYO CAT SPECIALISTS」は最後にSがついており、獣医師だけでなく看護師や受付のスタッフも猫のスペシャリストであるという意味があります。実際に採血をするときの保定や入院猫の世話は看護師が行っており、猫に優しい病院には猫に強い看護師が不可欠です。

獣医界には「保定9割」という格言があります。動く動物の採血などの処置をうまく行うには保定者の技術が9割を占めており、採血者の技術は1割に過ぎないという意味です。よく「採血うまいですね」などお褒めの言葉を頂きますが、実際には看護師の保定がうまいのです。

猫は力任せの保定を嫌う代表のような動物ですので、猫をうまく保定するには猫の扱いの経験が豊富であること、そして猫という動物を知ることが必要です。しかし現在のところ国内で動物看護師が猫について体系的に学べる方法はほとんどありません。私も看護学生からどうやって猫の勉強をすれば良いか質問されることが多いです。

その答えの1つが国際猫学会(International Society of Feline Medicine:ISFM)が行っている遠隔教育の猫ナースコースです。当院の看護師斎藤が受講した経験があるので、今回は斎藤さんにどんなプログラムなのか解説してもらいました。

 

動物看護士のための猫教育プログラム

https://icatcare.org/learn/distance-education/nurses

最近の猫ブームもあるのか、動物看護士対象の猫のセミナーに行くといつも満員の状態です。猫のことをもっと知りたい、学びたいと思っている動物看護士は多いと思います。

しかし日本ではまだ動物看護士が専門的に学べるシステムも少なく、特に猫に特化した勉強ができるところはほとんどありません。

日本より動物看護士に対する教育システムが整っているイギリスに本部のあるISFM(Internal Society of Feline Medicine 国際猫医学会)は動物看護士のための猫教育プログラムを実施しています。

2014年にこちらのコースを受講しましたので今回はこのコースについてお話ししたいと思います。

コース

CertificateDiplomaという2つのコースがあります。

Certificate:猫の看護と行動学、猫という動物についての幅広い知識を得ることを目的としたコースです。このコースは修了に1年かかります。

Diploma:さらに詳細に猫の看護、行動学について2年かけて学びます。こちらは基本的にCertificate のコースを修了した人が対象です。

 

内容

https://icatcare.org/

 

私が受講したCertificateコースは以下の6つのユニットに分かれています。

1 猫という動物について。主に行動学的問題や猫の習性について。
2 猫に優しい動物病院にするための工夫やハンドリングテクニックについて。
3 猫の看護学1 日常の健康管理、院内での各種検査、猫の扱い方
4 猫の看護学2 薬理学、鎮痛、輸液療法
5 猫でよく見られる病気
6 猫の栄養学

提出課題であるワークブックにはそれぞれのユニットの資料を読んでそのまま答えられる問題もありますが、ほとんどが実践的な問題です。例えば、「排泄行動について問題を抱えた猫のオーナーさんがいます。それについてのアドバイスの内容とその根拠について説明しなさい」「シニア期の猫に対するアドバイスについてまとめたオーナーさん向けのリーフレットを作成しなさい」のような形式の問題があります。自分の考えとその根拠を求められる設問が多いです。

このコースは遠隔教育として実施されているので、全てオンライン上で完結します。ホームページから申し込みをすると、ワークブックとその課題をこなすために必要な資料が見られる、ネット上のコミュニテイに招待されます。

ここには非常に多くの資料(各ユニットごとに数百ページ)があります。課題は6つのユニットに分かれていて、それぞれにワークブックと資料があります。

資料を読み、ワークブックに答えを記入したらそれをメールでISFMに送り、採点を待ちます。採点されたワークブックはコメントと一緒に返って来て、そのユニットが合格だったかどうかを知らされます。これを6つのユニットについて行い、全てのユニットが合格となるとコースは修了となります。

コース修了者

コース修了者には修了証とピンバッジが送られます。また、希望者はISFMのホームページのFeline friendly nursesのリストに名前が載ります。

課題をこなすために読まなければならない資料はたくさんあり、実際は仕事をしながら学ぶのは時間がなくなかなか大変でした。しかし、猫の看護をきちんと学べることはとても楽しく、興味深い経験でした。実際に病院での業務に活かせる知識や猫のために動物看護士ができることはもっといろいろあるのだということを知ることができました。

ISFMでは今回受講したCertificate コースの他にその上のDiploma コースと行動学を学ぶコース(対象は獣医師と動物看護士)も実施しています。こちらにも今後挑戦していきたいと思っています。

https://icatcare.org/nurses/feline-friendly-nurses

 

最後に

看護師として働きながら、1年間仕事後に英語で課題をこなすことは簡単にできることではありません。私もISFMの獣医師向けコースをやりましたが、予想以上に負担が大きく諦めそうになったことが度々ありました。当院はこの教育プログラムの費用をサポートし、修了者には資格手当を支給しています。これからは日本語でも勉強できるよう猫の教育プログラムが充実し、より猫に強い看護師が増えることを期待します。

 

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